饂飩が好きな俺から最初の
饂飩が好きな君へ最後の、の続編 ※相変わらずです
正直、今僕は幸せなわけでして、
「も〜江頭くんあつい〜」
そう言いながらも後ろから抱き締められた新保ちゃんは嬉しそう
「いいやんか〜新保ちゃん気持ちぃんやもん」
うん。いい匂いして、柔らかくて、ふくよかで。やっぱり女の子なんやなぁて感じする。「あいつ」はたまに後ろから抱き締めたら、ピキン硬直して柔らかくない引き締まった体がますます固くなるばっかしで。その度に俺、ポケ●ンの緑色の固くなるやつ思い出してなんか可笑しかった
「あんな〜江頭くんなぁ、最近堀田くんやなしに里奈のとこばっかし来てくれて嬉しい」
堀田と喋らんくなって4日め。案外時間はすら〜っと過ぎていって、なんか付き合ってたんが嘘みたいな感じ。まぁもともと俺はノンケやし。こんなもんなんかなーって思う。
堀田今何してんねやろ、俺が新保ちゃんと弁当食べ出して誰と食べてんねやろ。1人で食べとんやろか。
そう思ったら罪悪感がまたちくりちくりと頬を刺す。
確かに絶対の絶対に俺が悪い。堀田は強がりで口悪いけどああ見えて…線の細いやつやし傷ついてる筈。けどな、けど…やっぱり男は女の子を好きにるんが普通やんか、その普通に戻るのが何が悪いんや。せーしくんとらんしさんが出逢うから、はいおめでとさんて生産的な付き合いになるやん。でもせーしくんとせーしくんやったら…はいなんもない。非生産的や。そんな付き合いが長く続く訳ないねん。
長い長い言い訳は、もう1人の自分と、頭にちらつくあいつの横顔には、届かない。
もう嫌や考えたくないねん、俺さっき嘘言うた。4日間考えっぱなし堀田のこと。なんなん、うじうじ考えへんとこが俺の長所やてお婆ちゃんも言うてくれてたのにこの体たらく。無性にうどん食べたいわ
無意識にきつくなる俺の腕に新保ちゃんがきゃっきゃっとはしゃいで、それを遠くで見てる自分がいるのに気づいた。
なんやねん、ほんまに
*****
「おっちゃんうどんかけひとつ」
「…だからお前いつも言うけどな、注文制やなしに食券制やからな。おっちゃん券もらわな作れへんよ」
新保ちゃんの、放課後デートの魅力的な誘いを断って、俺は馴染みの立ち食いうどんの店に来ていた。さびれた感じの店内、くたびれた客に、無愛想な店の頑固親父。めっちゃ心地いいわなにここ天国?店内では、いつからあんねんて感じの古い扇風機が静かに首を回す。俺は頬杖ついて、厨房の親父の手さばきを見る。ここの麺はコシがあっておいしい。俺もこんなうどん作る人になったら一日中こねこねして何も考えんで済むやろか。
「俺もうどん職人になろかな…こんなうまい麺作るの何年くらいかかるん?」
「2日くらいやな」
「みじか!天才や!2日であの麺のコシは天才的やな!」
「…興奮してるけどな、冷凍麺やで。天才的な機械が作ってるの間違いやぞ」
「…なんやと!!人工いや、人ちゃうから機工なんこの麺!ええぇぇ」
「…お前黙って食われへんかいな」
親父は俺から遠く離れた簡素な椅子に座り野球中継を見始めた。商売諦めたらあかんやんおっちゃん
「バイト募集…「してへん。それにこっちにも選ぶ権利はあるねん、ボウズ」
ちぇ。うどん職人に弟子入りするのが一番近道やと思ったのに。そういえば前…堀田に「将来2人でうどん屋しよか」とか言うたことあったなぁ…恥ず。
けどあいつアホにするどころか「ええやん面白いな」て笑って、ノリノリでテストの裏に店内の見取り図書いたりしとった。アホや、ほんまもんのアホや。
けど、嬉しくて、俺は。
俺、は。
なんや非生産的とかちゃうやん。あいついっぱいなんか生産して、俺いっつもなんかもらってたやん。なんで気付けへんねん。ほんまもんのアホはーー
「…お前や」
骨に組み込まれた反射みたいに、音速の速さで振り返る。
「なんやねんびっくりさすな…やっぱり江頭か。久しぶりに会うたらまたうどんか。好きやな」
「ほ、ほ、ほったったた…たた」
「おい俺北斗の拳みたいになってんぞ」
笑った堀田の口元から八重歯が覗く。
「お、お前こそなんでうどん食べにきとんねん、俺の店やぞ!」
「江頭…おっちゃんからめっちゃ睨まれてんぞ」
「な、何でおんねん!」
堀田が、一瞬傷ついた顔をしてぐ、と言葉に詰まる。違う、違うそんなん言いたい訳じゃなくてやな
「ここなら…お前に会えるかなて。…ちゃんと、終わらそ思って」
頭がぐらぐらする。
「今までありがとうな、俺は楽しかった、けど、…江頭が楽しくなかったら意味ないねん。だから元通り友達に戻ろ。ほんで天ぷ…新保ちゃんと仲良うしい。今は無理やけど、俺、友達に戻る努力はする、から」
「嫌や」
「…え?」
「俺は絶対別れへんぞ」
堀田はツチノコをみたみたいなアホ面でこっちを凝視する。そんでおもいっきししかめ面。でた。堀田怖い。
「…は?どーゆう意味や」
「おっおまおまお前!うどん屋一緒にする言うたやんけ!」
「…意味不明や」
「面白そうや言うたやんけ」
箸を握り締めたままの左手がぶるぶると震える。堀田なんでそんな嬉しそうに笑っとんねん
「…江頭泣きそうなん?」
「違うわ涙出そうなだけじゃボケ」
ムカつくわ〜と思いながら顔を上げたら、おんなじやと嬉しそうに笑う堀田がいて、急に物凄く抱き締めたくなって
「うわっなんやねんお前」
「うるさいト●ンセル!」
末期や…固くなるこいつが新保ちゃんよりも可愛く感じてしまう。ぶっちゃけ俺のトラ●セルが固くなるくらい。ああホモ街道まっしぐらや。でもな、婆ちゃんごめん。
幸せや!
「お前ら…変な噂立つからとりあえず店から出てくれ、な」
「でもお前許した訳ちゃうからな。どんだけ俺しんどかったか…」
「わかってる!ちゃんと新保ちゃんに説明する。実は堀田ホモやからごめんて言う」
「…なんで俺だけやねん。しかも説明になってへんし。しばくぞ。」
「嘘やて!ちゃんと…ケリつけて、ほいで…これからは俺も生産すんねん」
「またわけのわからんことを…」
俺も生産してお前も生産して、ほいだら非生産的どころか超生産的や!
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