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ドアを開ける方法


あまりにもあっさりとその依頼を引き受けたハルヒは、即行動を心がけているのかさっさと怪事件にありつきたいのか、すぐさま部長氏のワンルームマンションへと向かった。
可もなく不可もなく、とでもいうような平凡なマンションだ。はためくセーラー服を追いかけて、俺、長門、古泉、朝比奈さん、さすがに外に出るのは気が引けて着替えた名前が続く。
どうして一番後ろを走っているのかは俺にもわからない。じっくり俺たちを観測しているかのような表情だ。観察のほうが正しいか?

「ここね。…何とか開けられないかしらね」

表札の名前を確認し、さらに乱暴にドアノブをがちゃがちゃと動かす。それから思い出したかのようにドアをノックしたが、順番が逆すぎる。ハルヒに世の常識というものはなんたるかを説き伏せてやりたいくらいだ。
裏からベランダを経由して入ろうと提案するハルヒを説き伏せ、まずは管理人に話をつけに行こうとする。友達のふりが上手なハルヒなら大丈夫だと追いかけようとしたところで、動かない名前を見つけて足を止めた。名前の視線の先には長門がいる。つられて古泉が立ち止まり、同じように二人を見つめた。

カシャン。

という音がして、ドアがゆっくりと開く。
液体ヘリウムのような瞳が俺を見上げた。それから、名前まで俺を見て、とってつけたかのように大きな声を上げる。

「ドア開いてるみたいだよ、ハルヒ!」

「あら。開いてたの?気付かなかったなあ。ま、いいわ。さあ上がりましょ。きっとベッドの下とかに隠れているから、みんなで引っ張り出して捕獲するの。抵抗が激しければ最悪、息の根を止めていいわ。依頼人には蜜蝋に漬けた首を届けましょう」

いやに生々しい話をするハルヒを楽しそうに見つめる名前を古泉が見つめていた。なんだか複雑だがとりあえず、古泉が名前を見ているということだ。なに見てる、と小さな声で問いかけると、古泉はふっと笑った。

「…いえ。苗字さんを見ていると、飽きないですね」

「………どういう意味だ?」

「言葉通りの意味ですよ。コロコロと表情が変わる、見ていて大変可愛らしいお方です」

「………」

背中が薄ら寒くなるようなことを言った古泉に、俺は心底いやそうな視線を向けておいた。
ぞろぞろとアリの行列のように部長氏の部屋に入る。蒸し暑い空気が肌を撫でた。



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あきゅろす。
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