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救いの女神


「お前らが揃って来るなんて珍しいな」

「来る途中に会ったものですから。お話をする丁度良い機会でした」

「ね。あ、ありがとう古泉くん」

「いいえ、礼には及びません」

何がだ?
いやに嬉しそうな名前の片手にはテスト用紙。うげ、思い出させるなそんなもの。ハルヒが相変わらずぎゃあぎゃあと文句を垂れている。どうせ処分係は俺なんだろう、と最早やさぐれるような気持ちで俺は団長机に手を置いた。

「あ、そういえば。ここもわかんなかったんだけど」

「どこでしょう?」

「これ。当てはめても答えが出なくて」

なんだ、テストの話か。
俺にはついていけない話題だ、というよりはついていきたくない話題だ。それにしても、名前は意外に勉強熱心だったんだな。というよりは、負けず嫌いなだけか。
しかしこの二人、なかなか様になっている。特に名前、本当に今だけは、年上のように見える。ほおを膨らませて拗ねるときや、躍起になっているときはとても子供っぽいというのに。
このシーンだけ切り取って誰かに見せれば、高校三年生でも通用しそうだ。

「ああ、これ、マイナスがプラスになってますよ」

「……………うわ」

と思ったら今度は途端に、子供のように笑って顔を真っ赤に染める。
面白い奴だな、とぼうっと思っていると、ハルヒが「ちょっと何してんのよ!それはこっちでしょ!?」と耳元で大ボリュームで叫んだ。お願いだから自重してくれ。
誰か止めてくれないかと思ったその瞬間に、俺の声が具現化したかのようにドアがノックされる。まさに救いの音。そして現れたのも救いの女神、朝比奈さんだった。

「あ、遅れちゃってごめんなさい」

いえいえ、何も気にしないでください。ここに来てくださるだけでもう十分すぎるほどなのですから、なんて考えていると、朝比奈さんはやや入りづらそうに口ごもる。

「四限目までテストがあって……。ええと、その……ですね」

ドア付近でまごついている朝比奈さんに、俺は首を傾げる。長門まで顔を上げる始末。朝比奈さんはやや顔を赤らめ、たじろぐ。それから思い切ったように口を開いた。

「あ、あの……お客さんを連れてきました」

その瞬間、名前が目を輝かせたように見えたのは気のせいだっただろうか。



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