ハッカー&クラッカー?
掃除があるから遅れる、と言っていた名前を置いてひとり部室に来たのはいいが、俺の心は暗鬱としていた。いつもどおりの日常が始まろうとしている。唯一の楽しみといえば朝比奈さんの給仕くらいで、他に何が楽しいのかと聞かれると俺は苦笑を浮かべるしかできないだろう。
だから今日も、朝比奈さんの「はぁい」という優しい声音を期待してドアをノックしたのだが、返って来たのは「どうぞ!」というハルヒの投げやりな声だった。
うげぇ、と俺が心の中で呟いたのは言うまでも無い。
「なんだ、お前だけか」
「有希もいるわよ」
なるほど視線を滑らせてみれば、そこには長門がやはり置物のように本を読んでいた。
だがしかし正式に言えば長門は文芸部員であり、このSOS団に帰属するわけではないのだ。とはいってもハルヒの横暴な行動により部活動に参加させられているというのは周知の事実であり、長門もそれを拒否しない。だからほぼ部員と言っても差し支えないので、俺は言いなおすことにする。
「なんだ、お前と長門だけか」
「そうだけど、何かクレームでもあるわけ?なら聞いてあげるわ、あたしはここの団長だもんね」
そうだな、まずは俺の心安らげる日常を返してくれ。
…とは言えず、俺は適当にそれを流す。ハルヒががっかりしたようだ。俺は知らん。
ハルヒは俺が昔やったことに対してぐちぐちと文句を言ったかと思えば、次にパソコンの不調を訴えてきた。俺がプログラマーだとかそんな専門的知識を所有していればすぐに答えれただろうがな、俺には一般以下の知識しか無ぇよ。お前がちょっと勉強すれば俺よりもっといいホームページが作れるだろうさ。
ひたすら文句を言い続け、しまいにはサイバーテロだとか言い出したハルヒを横目に、俺は長門へ視線を送る。こいつならなんとかしてくれそうな気がしたのだ。と言うより、こいつに不可能という文字は無いような、そんな気もする。
頼ってみようかと口を開きかけたとき、珍しくノックの音がした。
「どーぞっ!」
「おや珍しい。朝比奈さんはまだですか?」
名前と古泉が肩を並べて入ってくる。そのときの名前の表情がやたら何かを期待するような瞳だったので、ああ今日も何かあるんだな、と心の中で項垂れた。
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