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突然襲いかかる


鶴屋さんいわく「ウチの別荘の中じゃ一番小ぢんまりしてる」らしい別荘に到着し、どこが小ぢんまりしているのか問いかけたいと必死に考えていると、真っ先に車から降りたハルヒが長門と名前にタックルをかまし始めた。
非常に満足している様子のようで、何を言わずとも行動や表情で感情が伝わってくる。閉鎖空間の心配はしなくてよさそうだな、と安心していると、タックルからのがれた名前と長門がやってきた。

「お疲れ」

「うへへ、うん」

タックルされたというのにどこか嬉しそうな名前と、無表情ながらどこか楽しそうにしている(ように見えるのはほぼ俺の勝手な主観だが)長門を見ていると、少しはこっちも楽しく思えてくるな。

あたりの景色を一通り見渡して満足したのを見計らったように、新川さんがそれではこちらです、と渋い声で一言。喜んで執事についていくハルヒと引っ張られる朝比奈さん、マイペースに歩く長門と苦笑を浮かべながら進む古泉に続くように俺と名前。
新川さんと森さんの先導で別荘に向かって足を運んでいると、ふいに胸がモヤモヤとしはじめた。突然不安でたまらなくなって、思わず前にいる名前の服をつかむ。どうしたの、と振り返った名前の表情はいつもどおりで、これから何かあるだとか、恐ろしいことが待っているだとかの感情は窺えなかった。
今回待ち受けているのはただのお遊び殺人事件であり、それをすでに知らされているハルヒは無駄に感情を揺らしたりはしないだろうし、不安要素はないはずだ、たぶん。
なのになぜこんなに不安な気持ちになるのだろう。不安という気持ちよりは、あの夏休みがループしていたときのデジャヴに似ている。いや、それに似ているだけで決してデジャヴではないとは思うのだが、この違和感だけは消えないな。

「……キョン?どしたの?」

俺が服をつかんだまま何も言わないことを不思議に思ったらしい名前が顔を覗き込んでくるが、俺は何も言えないまま首を横に振った。長門が立ち止まり、一瞬こちらを見た気がしたが、再び顔をあげるともう別荘を見て歩いている。

「なに、寒いの?大丈夫?」

少し顔があおいよ、と言われて、次いで頬に何かが当たった。それが名前の手だと気づくまでに少し時間がかかる。やはり冬の気温には手の温度が負けるのか、掌の温度は低い。

「調子悪いんなら、ちょっと休んでからスキーに行く?ハルヒに言っておこうか」

気を遣わせてしまったな、とやや反省しつつ、名前の手首をつかんで離す。意味のわからない違和感は、煙をつかむようにふやふやと消えてしまった。

「……気のせい、だな」

「え?」

「なんでもない」

ごめんなと呟いて名前の頭をなでる。気のせいだと自分に言い聞かせても、胸のもやもやは晴れなかった。



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あきゅろす。
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