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禁則事項歳


鶴屋さんの別荘には二台の車で向かった。運転手は森さんと新川さんで、それぞれ人数をわけて乗車する。女性三人がギリギリ乗れるくらいの小型の車と少しゴツい車、運転手のイメージをそのまま投影したようなそれらに乗るメンバーを決めるのに少し時間がかかった。最終的には名前(と、ほぼ流される形で長門)が譲歩する形で、森さんの車にハルヒ、朝比奈さん、妹、鶴屋さん。新川さんの車に俺、古泉、名前、長門である。明らかにぎゅうぎゅう詰めな向こうの車に、乗るのは俺たちでいいんじゃないかと思ったのだが、森さんにやたらとなついた妹が乗りたいと駄々をこねたわけだ。そして妹の保護者的存在になっている朝比奈さんもセットとなると、向こうの車は女性陣専用みたいな感じになる。だが小型の車にはいくら女性とはいえ大勢は乗車できないため、名前がこちらに来たのだ。俺としては妹ぐっジョブなのだが、ここは口にしないほうがいいな。体裁的な意味で。

「悪いな、あいつのせいで」

「あー、うん、いいよ、気にしないで。別に誰が一緒でも楽しいから大丈夫!」

そう言ってもらえるとありがたい。ただ、あまりにも意識されていない感じがまた物悲しいな。俺がひとり悩んでいることなど知らず、名前はぶつぶつと、

「それにしても、森さんって何歳なんだろうねえ。少なくとも18以上……」

なんて呟いている。気にしていないにもほどがある様子の名前は腕を組み、うんうんと考え始めた。そんなのいちいち考えなくたって、ここにお仲間さんが二人もいるんだから聞けばいいんじゃないのか。
というわけで、ニコニコしながら俺たちを見ている古泉に聞いてみることにした。

「古泉、森さんって今何歳なんだ?」

「………」

女性に年齢を聞くのは非紳士的だとわかっているので、本人のいないところで…という考えをもって本人のいないときを狙い問いかけたのだが、古泉は困ったように微笑んで、ためらいがちに口を開いた。そしてすぐに閉じた。

「……どうしたんだよ」

「……いえ……」

結局そのあと古泉は「ええまあ」だとか「まあそれなりに」とか「彼女も女性ですから」とかなんとか言って俺の問いかけをはぐらかした。なんだ、森さんの年齢を口にしたら何かが爆発でもするのか。
長門に聞けば何月何日何時何分何秒に生まれたのかも教えてくれそうだったが、それはなんだか裏技を使うみたいで気に食わない、と断られたため、俺もあきらめることにした。そこまで必死になって年齢を聞くのもバカらしいしな。
ミラーごしに見えた新川さんまで心なしか気まずそうにしているようだった。こんな雰囲気の中、名前は自分が話の種をまいたということに気づいているのかもう忘れていしまったのかわからないが、長門の本を覗き込んで「それ何?面白い?」などと問いかけていた。空気を読め。



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あきゅろす。
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