こそこそ
列車に乗ったばかりの頃とはほんの少しばかり違った田舎風景を見ながら、俺はぼんやり瞼を伏せた。列車のリズムが心地よく、うとうととまどろむ。
しばらくそうしていると、俺が眠ったと思ったのか、古泉と名前がなにやらこしょこしょと話を始めた。俺に気を遣ってか、ほとんどささやくようなその声音。
「そういえば古泉くんはスキー得意なの?」
「あまり得意と言えるほどでもありませんが、滑れないわけではありませんよ」
「そっか。古泉くんて運動全般できそうだけど、何か不得意なものはないの?」
いったい何の話をしてるんだか。
しかしそれは俺も気になるところだな。同じ男として一つくらいは古泉に勝るものがほしいが、もうそれはあきらめた。ならばせめて不得意なところの一つや二つくらい知りたいじゃないか。いや、知ってどうすると突っ込まれたら何も返せないが。
「不得意なもの、ですか?そうですねえ……誤解なさっているようですが、運動全般が得意というわけではありませんよ?」
「またまたー。こないだの体力テスト、総合7位だったくせにー」
そう、これが悔しいことに、古泉の成績が非常によかったわけだ。運動部で全国大会に出たような猛者どもを通り越してのこの結果に、俺どころかハルヒも驚いていた。
俺の結果についてはあまり口にしたくない。まあだいたいの想像通りだろうが、上から数えても下から数えてもほぼ等しいくらいの順位だったな。
まあ俺に期待などしないほうがいいと言うことさ。ハルヒと長門と朝比奈さんについては言及するまでもなくご理解いただけるだろう。意外だったのは名前が案外高い順位だったことだな。つってもまあ平均より少し上くらいだが。
「体力テストのシャトルラン、古泉くんが走ってるのみたんだよ。90過ぎても平気そうだったからびっくりしてさ」
「はは、その日は調子がよかっただけです。持久力はそれほど無いんですよ?そうだ、名前さんは不得意なスポーツはおありですか?」
「あ、話そらしたー。うーん、あるにはあるけど……。」
なんとバレバレな話のそらし形だ。笑いそうになるのをこらえていると、タタンタタンと揺れる列車のリズムに、本格的に眠くなってくる。寝た?寝た?と聞こえた気がして、起きてるよと言うこともできないまま、夢の世界に落ちていった。
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