こんにちは先生
無い。
無い無い無い。
なんで私がこんな点数をたたき出せているのかと言うと、それは私の実年齢が18だからに過ぎない。
高校1年生の問題なんて数年前に終わらせたものだし、しかも私の通っていた進学校は結構レベルが高かったらしい。それだ。1年生のときにはこんな点数出せなかった。誓ってもいい。良くて70点くらいの、本当に私は平凡な頭だったのだ。
(まあ、2度勉強すればね)
十分すぎるほどの復習になるだろう。
国木田くんはすごいねー、なんて驚いていたけど、私にしてみれば国木田くんのほうがすごい。見せてもらった解答用紙にはだいたい80点台が連なっていた。そこで気になるのが今私のテスト用紙を見て驚いているキョン。低空飛行ってどれくらいなんだ。
「…にしても、名前」
「えっ?」
頭上から声がかかって、見上げれば随分と真面目な顔をしたキョンと視線が合った。
見ても楽しくないだろう私のテスト用紙を返し、私の肩に手を置き、お決まりの「やれやれ」と言った表情を浮かべる。
「お前なぁ、そこまで頭良いなら言ってくれよ。そして俺に教えてくれ」
「…なんかキョン、谷口くんみたいになってるよ」
「うるせい。俺はいつ赤点を取るか肝を冷やしているんだ」
本気でそこまで危ないのか。
自慢じゃないが私の勉強方法はいたって簡単なもので、夜教科書とノートを見る、これだけ。夜見ることに効果があるわけではなく、寝る前に見ることが大切なのだ。
これが結構覚えられる。あと音楽聴きながらとかね。クラシックがおすすめ…じゃなくて、人に教えるのは苦手だ。
「キョンは結構頭いいと思うんだけどな」
「それは皮肉か?」
「そうじゃなくて、」
小説の中で語り部として言葉を綴るキョンは、なんていうか、聡明っていう言葉が似合うような気がした。語彙も多く、状況説明も上手。いや、そりゃあ谷川先生が書いた世界だけどさ。キョンは頭がいいっていうイメージが私の中から離れない。
「じゃ、次のテストは名前先生だね」
国木田くんがそう言って笑った。一瞬、部室で着ているスーツのことを思い出す。まさかあれを見られたんじゃ…いやいや。そんなことはないさ。
キョンは何か複雑そうな顔をして国木田くんを見ていたけど、やがて小さく溜息を吐いて肩をすくめた。
ちなみにこれは、試験休みを目前にした事件が終わって一段落ついた後のことで、その事件とやらがまた、大変だったのだ。
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