[携帯モード] [URL送信]
訪問者の意図


「出るのが遅いのよ!」

「ごめん」

反射で謝ってしまった。ハルヒはふん、と鼻を鳴らせて、私を押しのけて室内に入った。おいおいおい勝手に何を。止めようと思ったけれど、こんなときに「お邪魔します」なんてことを言うもんだから、思わずどうぞと口走ってしまう。
一応礼儀正しいところがあるから、扱いづらいんだよなあ。ハルヒは。

「どうしたの?と言うか、何で来たの?」

「ご飯食べてないって言ってたでしょ」

言って、たけどさ。
一応リンゴは食べたし、ということを口の中でもごもごと言っていると、ハルヒはずかずかと人の家の(正確に言えば私の家ではなく、この世界での私の家だから私物扱いできないんだけども)キッチンに入ると、なかなか大きい冷蔵庫をバンと開けて、しけてんのねぇ、と呟く。チンピラか君は。

「おなか、すいてないよ」

「でも食べなさい」

「………食べ」

「なさい」

たくない、と続けようとした瞬間に、間髪入れず入ってきたハルヒの声に、これは頷くしかないのかな、と直感で悟り、素直に頷く。私が頷いたのを確認すると、ハルヒは小さく息を吐いて、ちょっと待ってなさい、と私をリビングまで連れて行った。
勝手知ったるなんとやら、で、ソファに座らされる。私の家に来たのは初めてに違いないだろうに、ぱっと見ただけでだいたいのものの配置がわかるらしい。てきぱきとした動作でテレビの電源をつけたハルヒは、何も言わずにキッチンへとまた戻っていった。

キッチンからがたがたと音がしている傍らで、テレビが今日のニュースを放送している。他県で起こった強盗殺人。地方であった窃盗事件。今日の天気は晴れのち曇り。ニュースの後は占いです。
淡々とただ紙に書かれた事項を読み上げているだけの声音に、寂しさが湧き上がった。



前*次#

10/95ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!