訪問者の意図
「出るのが遅いのよ!」
「ごめん」
反射で謝ってしまった。ハルヒはふん、と鼻を鳴らせて、私を押しのけて室内に入った。おいおいおい勝手に何を。止めようと思ったけれど、こんなときに「お邪魔します」なんてことを言うもんだから、思わずどうぞと口走ってしまう。
一応礼儀正しいところがあるから、扱いづらいんだよなあ。ハルヒは。
「どうしたの?と言うか、何で来たの?」
「ご飯食べてないって言ってたでしょ」
言って、たけどさ。
一応リンゴは食べたし、ということを口の中でもごもごと言っていると、ハルヒはずかずかと人の家の(正確に言えば私の家ではなく、この世界での私の家だから私物扱いできないんだけども)キッチンに入ると、なかなか大きい冷蔵庫をバンと開けて、しけてんのねぇ、と呟く。チンピラか君は。
「おなか、すいてないよ」
「でも食べなさい」
「………食べ」
「なさい」
たくない、と続けようとした瞬間に、間髪入れず入ってきたハルヒの声に、これは頷くしかないのかな、と直感で悟り、素直に頷く。私が頷いたのを確認すると、ハルヒは小さく息を吐いて、ちょっと待ってなさい、と私をリビングまで連れて行った。
勝手知ったるなんとやら、で、ソファに座らされる。私の家に来たのは初めてに違いないだろうに、ぱっと見ただけでだいたいのものの配置がわかるらしい。てきぱきとした動作でテレビの電源をつけたハルヒは、何も言わずにキッチンへとまた戻っていった。
キッチンからがたがたと音がしている傍らで、テレビが今日のニュースを放送している。他県で起こった強盗殺人。地方であった窃盗事件。今日の天気は晴れのち曇り。ニュースの後は占いです。
淡々とただ紙に書かれた事項を読み上げているだけの声音に、寂しさが湧き上がった。
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