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朝比奈さん大天使


「あ。キョンくん、名前ちゃん、こんにちは」

動じない名前が「こんにちはー」と挨拶を返すが、俺はそう頭の中の回転が速いわけでもなく、目の前の朝比奈さん(小)と朝比奈さん(大)を見比べる。
それから数秒後して、そういえばこいつは知っていたんだなと、低い位置にある頭を見つめた。

「ふふ。こうして見ると……、子供みたい」

ふにふにと在りし日の自分の頬をつつく朝比奈さんを、名前はパンダか何か、珍獣を見つめるような瞳で見下ろしている。そう見てやるな、朝比奈さん(大)に穴が開いたらどうする。

「この時のわたしはこんなだったの?」

ものめずらしい笑顔を浮かべてそう言う朝比奈さん(大)に、俺は曖昧に微笑むしかできなかった。

「ここまであなたたちを導いたのはこの子の役目で、これからあなたたちを導くのはわたしの役目です」

詳しくは『禁則事項』、だそうで。
事の次第を全てわかっている名前はともかく、俺は心の準備が必要なわけで。
恨めしそうに名前を見ても、何か答えてくれるわけは無かった。
眠っている朝比奈さん(小)に視線を送れば、朝比奈さん(大)が目を細めて笑う。

「眠らせました。わたしの姿を見られるわけにはいかないので」

どうやってだ。

「ど、どうやったんですか?」

俺の気持ちを代弁したかのような名前の台詞に、朝比奈さん(大)はくすっと息を漏らした。
お決まりのように人差し指を唇の前に寄せて、「禁則事項です」と囁く。うっかり夢の世界にでもいるのかと思うような美しさだった。



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あきゅろす。
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