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レッツタイムトラベル


目が覚めると、やたら優しい香りがした。なんだこれ。ぱちっ、と音がしそうなほどの勢いで目を瞬かせると、「あ。起きた?」天使の声だ。
俺は朝比奈さんの膝の上で眠っていた。これがまた、器用なことに朝比奈さんの左太ももに俺の頭が、右太ももに名前の頭が。よく乗せましたねと言ってさしあげたい。

「もう、脚が痺れちゃってたいへんです」

泣きそうに笑う朝比奈さんの脚の上からどけて、次に名前の体を揺する。どうやらあの優しい香りは、こいつのシャンプーか何かのようだった。…同じのを使ってるはずなんだが。

「むお、いや、まだだって…」

「いや、何がだ」

どうやら夢を見ているらしい。
まだって何だ。急かされてるのか。お構い無しに体をぶんぶんと揺すれば、怒ったように身じろぎする。小学生か。

「ふふ、名前ちゃん、子供みたい」

「ああ、多分正真正銘の子供です。ハルヒよりゃいくらかマシですけど」

さしずめ俺はお父さんか?
嫌な感情を覚えつつ、ただいまの時刻を教えてもらう。きっかり三年前に戻っているようだ。ちなみに名前は起きる様子が無いので放っておくことにした。
そうこうしているうちに突如肩に柔らかい衝撃が。何事かと視線を下ろせば、朝比奈さんが眠っていた。

「ううん…?」

朝比奈さんが眠ったと同時に名前が目覚め、背伸びをする。良く眠れたようだな。それから俺を見て、朝比奈さんを見て、両方を見て、「お邪魔しました」と言ってこそこそとベンチから移動しようとする。あいつ絶対確信犯だ!

「いやあ、キョン、邪魔してごめんね」

「ふざけるな。それよりちょっと手伝ってくれ、このままじゃ動けん」

名前の力を借りて、朝比奈さんをとりあえずベンチに寝かせる。腕に当たる吐息は勿体無かったが、メリットデメリットを考えると仕方ない。
名前がせめてと言いつつ持っていたハンカチを畳み、朝比奈さんの頭の下に置く。そのときだった。
突然、ガサガサと背後の植え込みが音を立てたのだ。

「ちゃんと寝てますか?」

「あっ」

驚いているというよりは感動しているというように、名前が声を上げる。
――そこに現れたのは、朝比奈さん(大)だった。



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あきゅろす。
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