未来人エンジェル
「いいでしょう。どこに行くんですか?」
俺が声を大きくすると、短冊から顔を上げた名前が俺を見た。
「あっ、えっと、あ…。そっか。キョン、邪魔みたいだから私部屋から出てるね」
何がそっか、なのやら。短冊と鞄を持って外に出ようとする名前を、俺…ではなく朝比奈さんが引き止める。いきなり腕を掴まれてびっくりしたのだろう、いつもより目を丸めた名前が、掴まれた手首と俺を交互に見る。何故俺。
「あの、名前ちゃんにも、来て欲しいところが…」
「…私………、?」
こくんと小動物のように首を落とした朝比奈さんに癒されつつ、名前の返答を待つ。
ぽつりと小さな声で「私も行って、いいの?」と朝比奈さんに問いかけた。
「うん。名前ちゃんも一緒じゃないとだめなの」
「だめ………?」
なんだか随分考え始めた名前を見つつ、ああこれも書籍化されたんだなぁ、と感慨深く考える。なんだか勿体無いな。俺がエンジェルと崇め奉る朝比奈さんの、素敵な笑顔とか素敵なお茶とか素敵な態度とかが全部文字となって保存されてるんだぜ。
俺だったら1日3回は読み返すね。そして当時に思いを馳せるさ。
「わかった。つれてって?みくるちゃん」
「よかったぁ」
ほっと胸をなでおろす朝比奈さんに俺は再び声をかける。「で、朝比奈さん。どこに行くんでしょうか?」――俺の質問に朝比奈さんは、なんともいえない表情を浮かべた。
「その……ええと……三年前に、です」
前*次#
[戻る]
無料HPエムペ!