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吊るす義務


「なに、あんた、無欲ねぇ」

「そうかな?でも、今晩は明太子が食べたいなー、とか、2000円の服が欲しいとか、そういう細かい願いは多いんだよ?」

ただ何年も先のことで願う、なんていうことが見当たらないだけで。
まあ確かに二十五年後や十六年後に明太子を食べたところで日常と何が違うんだ、ってことになるしな。

「えーと、うーん。やっぱすぐには決まんないな。ハルヒ、帰るまでには決めるから、今は保留でもいい?」

「…いいわよ。ただし!ちゃんと今日中に吊るすのよ!今日を逃すとベガもアルタイルも叶えてなんかくれないんだからね!」

「はーい」



なぜかテンションの低くなったハルヒは、いつもより多少早い時間に立ち上がった。
それから「今日はこれで帰るわ」そう言って、立ち止まりもせずに迷い無い足取りでドアまで進む。
ドアを開けて一瞬振り返り、名前を見た。名前はまだ短冊と奮闘中だ。

「名前、ちゃんと吊るしなさいね!」

「はぁい。気をつけて帰ってねー」

ドアが閉まり、続くように古泉が帰る。さらに続けて長門が。長門は帰り際、俺に謎の幾何学模様の書かれた紙と、少し種類の違う紙、合わせて2枚を渡してきた。一切の説明も無いまま、挨拶も無いまま、長門は部屋から姿を消す。
ちなみに俺は朝比奈さんの要望により部屋に残っている。現在部屋にいるのは俺と朝比奈さんと名前。うんうん呻って(そこまで考えるほどのことか?)、短冊とにらめっこ状態だ。
朝比奈さんに体を向けると、朝比奈さんはほうっと息を吐いて俺と目を合わせた。

「あ、あのぅ。一緒に行ってほしいところがあるの」

「ええっと………、あいつはいいんでしょうか?」

朝比奈さんは視線を横にスライドさせ、名前を見ると、こくんと頷き「はい、いえ、名前ちゃんも一緒のほうがいいです」と言った。



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