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感情って難しい


挨拶を済まし、ひとり先に帰った…というか、閉鎖空間へ向かった古泉を見送り、戻ってきた名前の首根っこを引きずってハルヒたちのところへ戻る。

「キョンさん、息ができません………」

「………」

一応足はかばうように引っ張ってるぞ。どんな引っ張り方だなんて聞かないでくれ、うまく説明ができないから。
名前は「古泉くん大丈夫かなー、いや大丈夫っていうのは知ってるんだけど大丈夫かなー」なんて全く不毛なことをつらつらと口にしている。

「キョンー」

「……なんだ」

「なんか、怒ってる?」

…怒ってる?
俺は怒っているんだろうか?いや、別に自分はそんなつもりは無い、…と思う。少し腹立たしい気持ちではあるが。
けれど何に対して怒っているのかと聞かれれば言葉に詰まるわけで。立ち止まった俺の手から逃れた名前が正面に立つ。ひょこひょことひよこのように歩きながら。

「……………やっぱ怒ってる」

「………」

怒っていないといえば嘘になるし、怒ってるといえば何に対して怒っているのかが言えない。つまり俺には黙り込むしか手段が無いわけだ。名前は小さく溜息をついて、犬耳がついていれば間違いなく垂れ下がっている、そんな顔をした。

「ごめんね」

「え…、え?」

何を謝ってるんだこいつは。
古泉に謝っているのとはまた種類の違う、古泉に言っていたような力になれない悔しさ、とかそんなものではなく、ガラスコップを割ってしまって困っているような感じだ。

「心配かけてごめん。でもほら、有希のお陰で痛みが無いんだよこれ」

「…」あ、足のことか。
俺はなぜか突然肩の力が抜け、がっくりと落とした。



異世界人の退屈−野球編/終

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あきゅろす。
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