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手伝うということ


「二回戦は辞退しよう」

俺の申し出にハルヒは目を瞬かせた。
どれだけ楽しんだか、どれだけ相手が頑張ったか、古泉はこれから用事でいないし、名前だってまだ足が治っていない。それらの要素をぼんぼんと口に出して行けば、ハルヒはほぼ渋々だが納得してくれたようだった。
ハルヒが皆に昼食のお誘いをしている最中、名前はひとり、帰る準備をしている古泉の元へと向かっているようだった。
臨時収入をポケットに突っ込んだ後、こっそり近づいてその様子を見てみる。何故堂々と行かないのかって?知らん、俺にもわからん。なぜだかこっそり近づいちまったのさ。

「古泉くん」

「おや、苗字さん。どうしたんですか?足は、大丈夫ですか?」

長門のおかげでな。俺は心の中で呟く。「うん、結構動けるようになったよ。有希のおかげ」明るく答えた名前になぜかちょっと腹が立った。

「それで、どうしたんでしょう?何かありましたか?」

「あ、いや、なんていうか、応援?」

ほら私チアガール衣装だしね、と言って両手を上げた名前を、古泉は実に微笑ましそうに見ている。なんだその、慈愛に満ちた笑顔は。やめろ。

「閉鎖空間、」

ぽつりと名前が呟き、古泉の笑顔が一瞬固まった。携帯を握る左手がわずかに震える。何を言うつもりだ?

「何も手伝えないから。…ごめんね」

「あなたが謝ることでは……」

珍しく古泉のニヤケハンサムが真顔になった。
俺も同意だ。なんで名前が謝る必要がある?けれど名前は首を振り、苦笑しつつ肩をすくめる。

「異世界人だっていうのに、何か特別なスキルも何も無いしね。できることと言ったら見守るくらい。だからごめんね、って」

(…あいつ、そんなこと気にしてたのか)

眉尻を下げた名前を見下ろし、古泉も眉尻を下げて笑う。間違えて大切な書類を破ってしまった子供に対して、いいのよ、と言っている母親のような瞳。

「…十分ですよ」

「へ?」

顔を上げた名前の頭を優しく撫で、「あ、すいません」と言って手を離す。あれか、条件反射のようなものだろう。あいつはなぜか撫でたくなるような何かを出している。

「僕は、僕のことを気遣ってくれるあなたのその気持ちだけで、……十分です」

名前は困ったように笑う。そっか、と呟き、俯いた。
なぜか絵になるようだが…気に入らん。とりあえず古泉よ、その慈愛に満ちた瞳はやめろ。



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