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ヘナチョコボール大活躍


長門が大きく球を打ち上げたその瞬間、俺は全てを理解した。
古泉曰く『妙案』らしい。長門の呪文により、バットは恐怖の棍棒と化してしまった。振れば当たる振らねど当たる。素晴らしいね。
俺まで簡単にホームランが打ててしまうなんて、アレだな。これをお茶の間に出せばウン十億円で売れそうだ。いや、兆をいくか?野球界で相当な波紋を呼ぶぞ。
ついに逆転、9-13。ハルヒと名前が入れた純粋な点を除けば11点だ。俺はもうそろそろヤバイんでないのか、と思い始めていた。すぐさま長門にやめてもらうよう指示を送る。
あれだけの勢力を発揮したバットは、長門の不思議で3秒程度で終わる呪文によりただのバットと姿を戻した。本来の姿を取り戻したバットは、バッターを見事に三振に追いやる。

「このまま行けば勝てる…!」

呟いたのは誰だっただろう。誰でもいいが、誰かのその言葉に俺は心の中で頷いた。
長門の的確な処置を受けた名前は、かすかに眉尻を下げてグラウンドを見つめている。何を考えているのかは、わからなかった。今は、あいつの知りうる限りの展開どおりに進んでいるのだろうか。進んでいるのだろうな。
だからこれも、決められていた運命だったのか?


「キョンくーん、頑張れーっ!」

ああ妹よ。俺は今すぐこのグラブと球をお前に進呈してやりたい。どうぞ好きなようにやれ。
俺はどういう因果か、ピッチャーという無縁なポジションについていた。
とりあえず投げてみる。見事なまでのボールだ。「まじめにやれーっ!」ハルヒの叱咤が飛ぶが、俺だってどうしようもないさ。
だが、驚くのはこれからだ。さあ見てみろ今の俺の球。ボール確実だったものが、三十センチ下降しストライクだ。
相手が目を丸くするのもわかる。俺だってそうしたいところを必死にこらえてるところなんだよ、わかってくれ。
長門の頑張りにより、俺のヘナチョコボールは全てストライクになった。相手がどれだけ頭を捻っても、どれだけ頑張っても、打つことの出来ない魔球。俺は今すぐ土下座できるものなら土下座して謝りたかった。インチキしてごめんなさい。
そのときだ。俺の投げた球が、あらぬ方向へと飛んだのだ。

「長門!球を拾って投げろ!」

遊園地で風船を配る人形が歩くような足取りで、とてとてと球まで近づき、拾い、ビュンと鼓膜を震わせるような過激な音をたてて球を飛ばす。ハルヒのグラブを持っていく勢いで球は正確に飛んでいった。
古泉がハルヒのグラブの中から球を取り出し、走者に当て、ゲームセット。…何て言ったらいいのやら。お疲れ様です。



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