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やきもきしていた


ハルヒの健闘もむなしく、試合はもうじき終わる方向へと向かっていた。なんてったってもう三回裏に突入だからな。守備がスカスカなのはわかっていることだし、現在バットを握っている朝比奈さんが打てないのはわかりきっているから、俺はグラブをはめる。
そのときだった。

「うああ、もう!!」

ベンチに座っていた名前が大声を張り上げた。驚いたのは俺だけじゃない、ニコニコ笑っていた古泉まで少し笑顔が固まった。

「ハルヒ!!バッターチェンジして!!!」

「なっ、おま、」

制止をかけようとする俺を睨みつけ、怪我していないほうの足で地団駄を踏む。ハルヒは朝比奈さんと名前を見比べていたようだが、明らかに名前のほうに可能性があると見たのだろう。二つ返事で返した。

「お前、足…」

「キョン、一回だけ!!お願い!!…これの結末は知ってるの、知ってるけど…!どうしても打ちたいの!!!」

この結末は知ってるけど、ときたか。つまり、勝つけど打ちたいってことだ。勝つのか…。重たい考えを引きずりつつ、視線を下げる。靴下の下に隠されている包帯を見透かしたように見つめれば、ばつが悪そうに名前は身じろぎした。

「名前!打ちなさい!あたしが許すわ!――審判、バッターチェンジ!」

朝比奈さんが涙目で戻ってくる。「名前ちゃん…、ありがとう〜…」本当にバッターボックスに立つのが嫌だったようだ。
バットを名前に手渡して、ベンチへと戻る。俺が制止しようとしたときには、名前は走ってバッターボックスへと向かっていた。

「…おや?」

古泉が呟く。「……腹痛は、もういいのでしょうか?」その言葉に何か含みがあるような気がして、俺はそうなんじゃねえのかとぞんざいに答えた。

「名前ー!打ちなさいよー!!!」

「まかせろーい!」

威勢よく叫び、力強く飛んで来た球を打つ。
ブォン、と驚くほど豪快な音をたてて、空振った。



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