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チアガール参上!


ハルヒの剛速球で相手を驚かせたのも一瞬のもので、さすがは大学生というか、すぐに球筋を読み、反応してくるようになった。やっぱりうまくはいかないもんだな。
守りは攻めと違ってそれなりなのだが、所詮寄せ集め。2点を取られてしまった。さああと8点取られれば試合終了だぞ。頑張れ俺。

「がんばれーっ!」

ベンチで名前が声を張り上げている。ふと、視線が合った。俺が軽く手を振ると、名前は唇を尖らせながらも手を振る。いやに律儀なやつだ。

攻めに入ったが三者凡退、守りはウィークポイントを見つけられたようで、今度はなんと5点も取られた。まあ、俺としては嬉しい限りだがな。
攻めにまた入り、鶴屋さんが粘っていた。なかなかあの人も運動神経の良いお方のようだ。だが、あえなくキャッチャーフライ。ハルヒは何事かを考えている。
かと思えば審判にタイムをかけ、朝比奈さんの首根っこを掴むとベンチ裏へと消えていった。その際、座っていた名前まで引っ張っていったのはどういうことだ。

数分と経たないうちに戻ってきた3人を見て、いや、正しくは2人を見て、俺はあごが外れるかと思ったね。表情には出さないから心の中の俺のあごが、っていうことで。
途中朝比奈さんのあられもない悲鳴が上がっていたからなんとなく予想はついていたがな。

「おいっ、お前…!」

俺はまず朝比奈さんでなければハルヒでもなく、名前に声をかけた。憮然とした表情が、今は微妙な笑顔に変わっている。

「お前、そのかっこ!」

「あ、キョン。どうこれ?似合う?」

「そうじゃなくて!何してんだ!」

あくまでも小声だ。
国木田や谷口あたりは朝比奈さんの姿に見惚れているから、その陰で名前の足元を見る。白色の、少しダボついた靴下で包帯を綺麗に隠しているようだった。

「ハルヒがね、腹痛でも着替えて応援くらいはできるでしょって。ベンチに座って応援ってことで」

「全く………」

俺は汚れたときのためと、一応こういったことを想定していたのでそのためにジャージの替えの上着を持ってきていた。それを名前の肩にかける。「なに?」首を傾ける名前に寒いだろうが、と呟けば、納得してくれたようだった。
だがしかし現実はそう甘いものではなく、朝比奈さんのすばらしい応援は心を躍らせてくれるが、その力がバットに宿るわけではないのだ。やる気満タンの谷口は、すごすごと戻ってきた。

「ありゃあ、打てねえな」

「ドンマイ谷口くん!!」

すぐさまチアガール姿の名前の声援が轟く。谷口は何を思ったのやら、顔を真っ赤にして無駄にはしゃぐ。落ち着け、気持ち悪いぞ。

「あ、あ、ありがとう苗字…いや、名前!!」

「いえいえ次ファイトー!」

おい、何呼び捨てにしてんだ谷口!そして何故さも当たり前のようにスルーしている名前!!
…やれやれだぜ。俺にもよくわからんが。



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