通常時との差異
「驚きですね。本当にちょうど千本ぴったりですよ」
「そんなもんを数えているお前のほうが驚きだよ」
古泉と軽い言い合いをしているうちに、よろめきながら名前が戻ってくる。本当によろよろしている。そこまで頑張らんでも、と思わずにはいられなかったが、本人の意思なら文句は言えない。
「お疲れ」
「疲れた〜…でも楽しかった〜」
ぽんぽんと頭を軽く叩き、長門のところへと足を向ける。
「なあ、試合当日だがな、雨を降らせてくれないか。雨天中止になりそうな、デカイやつを」
俺が提案しているのを見て、なぜか名前はニヤニヤ笑っていたが。どうせこの顛末も知っているのだろう、微笑みひとつで見過ごして、ハルヒの元へと走っていった。
帰り道。いつになく疲れた体を動かしつつ、俺は隣で無意味に笑顔を浮かべている名前を見下ろす。俺は言うべきか言わないべきか多少迷った。本人はこれでも隠しているようだし。…けど、まあ、なんだ。いつもより歩幅が狭い。速度が遅い。
「なあ、名前」
「なに?」
「ちょっと止まれ」
「?」
訝しみながらも立ち止まった名前を上から下まで見て、ははん、と心の中で呟いた。しゃがみこんで、手を伸ばす。左足首を掴めば、「わぎゃあ!」朝比奈さんより雄雄しい悲鳴が上がった。まああの方はカナリアのようなかわいらしい悲鳴を上げるからな。
「きょきょきょキョン!!」
「なんだ」
「…いつ、ばれてたの?」
「グラウンドにいたときからだ!」
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