千本ノックIN異世界人
おっしゃばっちこーい、の声が轟き、グラウンドで熱気ある声が続く。
最初は千本ノック、と言いながら球をガンガン打ち出したハルヒに、古泉は嬉しそうに笑った。
「いやあ、久しぶりですよ。懐かしいな、この感触」
そうか。ならばひとりでさばきつづけてくれ。俺はもう疲れた。
長門に視線を送れば微動だにせず立っているし、朝比奈さんは…言うまでもないだろう。名前は、なんとこれが、意外にできるのだ。5本中3〜4本の確率で、ハルヒの打ち出した球をキャッチしている。運動神経はそこまで悪くなさそうだ。
「わきゃあ!」
朝比奈さんの悲鳴が上がる。膝小僧に直撃したボールがころころと転がっていくのが見えた。「後を頼む」古泉、長門、名前に言い、俺は朝比奈さんのところへ走った。
「こらぁ!どこ行くのよ!キョン!みくるちゃん!戻りなさぁい!」
「負傷退場だ!」
叫んだが聞こえただろうか。
一瞬名前がこちらを向いて、軽く手を振った。
俺が戻ってきたのはそれから間もない。
戻ってきたときには、古泉と長門はグローブを外し、だいぶくつろいだ状態でグラウンドを見ているようだった。
「やあ、どうも。お帰りなさい」
「何やってんだ、あいつは」
「見ての通りです。どうも我々では手応えがなかったようでしてね、先ほどからあの調子です」
「…おい、名前はどうした」
声も出さずに古泉が手をあげた。ぴんと伸ばした指先を見れば、野球部員の中に異色の教師(スーツ)姿。「…あいつ何やってんだ」思わず呟いた言葉には珍しく長門が答えた。
「彼女の意思」
「へ?」
「苗字さんが自ら言い出したのですよ。取りこぼしの無いようになりたい、とのことです」
「変なところで負けず嫌いだな……」
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