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プールサイドで昼食


珍しく笑顔じゃない表情だ。眉を寄せるような仕草を取っている様子に、俺は何かあったのかと不安になる。

「どうした」

「いえ……」

珍しく歯切れ悪い古泉に、さらに不安感が高まった。まさか、閉鎖空間が発生、とやらだろうか。
防水加工が施してあるらしい携帯は荷物置き場にきちんと置いてあるが、まだ鳴っていない。

「たぶん僕の気のせいです。春先から色々あったせいで、ちょっと神経質になっているだけでしょう。あ、上がってこられましたよ」

古泉が指した方向にはハルヒたちがいた。プールサイドに上がったハルヒに気付いたのか、名前も子供たちに手を振って上がってくる。

「そろそろゴハンにしましょう。なんと!みくるちゃんの手作りサンドイッチよ。時価にしたら五千円くらい、オークションに出せば五十万くらいで売れるわね。それをあんたにタダで喰わせてあげるんだから、あたしに感謝しなさい」

「ありがとうございます」

完璧無視して俺は朝比奈さんにお礼を言った。重ねて言うが、朝比奈さんにだ。
広げられたサンドイッチは見るからにうまそうで、こんなところで食べてしまうにはもったいないような気すらする。もっとこう、バカンス的な、ハワイとかそんな豪華なところで食べるならいざ知らず、庶民プールだぞ。あ、いや、市民プール。

「うまくできたかどうか解らないけど……。美味しくなかったらごめんなさい」

うまくないわけがない。もじもじと指先を合わせる朝比奈さんに再びお礼を言って、サンドイッチを口にした。最早美味しいのかすらわからないほどに感動的な味だった。
その後、自分の分をたいらげたハルヒはまた泳ぎに行き、朝比奈さんもうっかりハルヒの「みくるちゃんも、ほらこっちこっち!」という言葉に頷いてしまい、水中に入って行ってしまった。
というわけで、俺と古泉はまたプールサイドでのんびり過ごしている、というわけだ。そういや長門は日焼けしたりすんのかな、と視線をさ迷わせると、日陰にちょこんと腰掛けていた。その隣には名前もいる。あいつら、何をしてるんだろう。
会話の内容は聞こえなかったが、何かを話しているようだった。

「うん?」

なんだろう、突然、既視感が襲った。いつもの長門と名前――、けれど、どこか二人とも、退屈そうな。
その変な感覚が続き、俺は次にハルヒが何か言うことを思い出していた。

「この二人があたしの団員よ。何でも言うことを聞くから、何でも言っちゃいなさい」

ああ、やっぱり。



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