二人でペナルティ
なんだろう。夢の続きみたいな、奇妙な感覚にとらわれながら、俺は電話を放り出す。まあいい、とにかく今は名前に伝えなければな。
「おい、名前……」
呼びかけたが、名前の姿は既に居間にいない。どこに行ったんだと、とりあえず部屋に向かっていく。ノックをすると、名前が元気よく出てきた。
「よしっ!行こうか、キョン!」
「行くって、どこに」
「え?」
ていうかお前、その手に持っているものは。
俺はハルヒから言われた水着その他の持参物を、名前が既に持っている事実に驚いた。まるで、もうわかっていたかのように。名前はとたんに困ったような表情を作り、頭をかく。
「あー、えーと、さっきの電話、ハルヒからだったでしょ?ほら、声が聞こえたから、準備したんだよ」
「………ふうん」
なんだか様子がおかしいが、言っていることは正論なので黙っておく。
いいからキョンも準備して、と背を押されたものだから、とりあえず自分の部屋に向かった。
名前を乗せて集合場所付近の駐輪場に自転車を停めたのはいいが、十五分前だというのに俺と名前を除くSOS団団員は全員揃っていた。勿論団長様もだ。
こりゃ、おごりは確定だな、と思いつつ名前の背中を押す。
「お前、ちょっと俺より先を歩け」
「やだ」
返ってきた言葉に、え?と口を開いた。
「一緒に並んで行ったら、ペナルティだって半分こずつだよ」
なんで俺が考えていることがわかったんだろう。
疑問に思う暇もなく、ハルヒの叫び声が飛んでくる。
「遅いわよ、キョン、名前。もっとやる気を見せなさい!」
伸ばされた指が俺と名前を指した。
「みくるちゃんも有希も古泉くんも、あたしが来る前にはしっかり到着してたわよ。団長を待たせるなんて、あんたたち、何様のつもり?ペナルティよ、ペナルティ」
あーあ。
せっかくの俺の厚意を、と溜息をつくと、名前は別にいいじゃない、と微笑んだ。まあ、お前がいいならいいんだけどな。それにしても、おごり、という言い方をせずペナルティ、と言ったから、今回は何か違うことでもやらされるのだろうか。まあいいか。
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