[携帯モード] [URL送信]
十六日のこと


そのまま名前を引っ張って、飲み物のコーナーへ向かう。これだけ暑いと無性にサイダーが飲みたくなるのはやはりCM効果というものなんだろうか。ポピュラーなサイダーを名前が持って来たかごに突っ込んで、妹や家族の分も買っていく。どうせ俺の分だけだと妹がやかましいし。
あと何か買うものあったかな、と考えていると、呆れたまなざしで名前が俺を見上げた。

「キョン、アイス、アイス」

「……あ、忘れてた」

暑さで頭がやられているようだ。
だいぶ涼しくなったのはいいものの、俺たちはそろってアイスコーナーに向かう。特設されたらしいコーナーにはやはり子供が集っていて、そこに高校生の俺たちが入るのは少し抵抗を感じられた。群がって棒アイスやカップアイスを探している子供たちを見て思わず頬が緩む。俺にもあんな時代があったな。
それにしても、やっぱりあんな小さい子供たちがたかっているアイスコーナーに突入するのはなんだかやりづらいというか。

「大丈夫、私がいる」

「そうだな」

少なくとも俺が単身で突っ込むわけではない。
二人でアイスを探して、さっさとレジに向かった。小さいアイスとカップアイス数個、あとはファミリー用一箱。家に置いておけば妹あたりでも食べるだろう。

「よし、溶けないうちに帰るぞ」

「りょうかい!」

自転車のかごにアイスを突っ込み、自転車を進ませる。横を流れていく車が日光を反射してビカビカ光った。眩しさに目を細めていると対向車とぶつかりそうになるものだから本気で焦る。背中を流れていく汗が気持ち悪かった。すまん名前、背中を掴んでいるお前の手に汗がつくかもしれん。
なんて考えている俺のことなど知る由もなく、名前がぽつりと呟いた。

「今日って、何日だっけ?」

「どうした、いきなり」

ちょっと気になることがあって、と言ったその言葉に、いやな予感が背中を駆け抜けていく。

「んー……確か、八日じゃなかったか?」

暑さで蕩けた脳みそをなんとか回転させて思い出した。ああ、夏休みももう中盤に差し掛かっているというのだな。長い休みほど短く感じるもんだ。

「ようか……?」

意味深に黙り込んだ名前に、俺は何か言おうと思ったのだが、何しろ今は自転車を漕いでいるわけだし、このパターンだとまた何か起こるに違いないから怖くて聞けない、というのもある。ああまた何かあるのかと思いつつも、何も出来ない俺はひたすら溜息を吐いて自転車を進ませるのだった。



前*次#

2/52ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!