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足を掴まないで


それから半分泣きそうになっている名前の手を引っ張り、心持ち速めに歩く。俺が先頭を歩けば多少名前の恐怖も緩和されたようだ。

「ひっ」

それでも時折横から飛んでくる手とか飛行物体には驚くようで、俺の手を掴んだり抱きついてきたりとなかなかにおいしい思いをさせてもらっているのだが、いやあ本当に運が良かったと言うべきか悪かったと言うべきか。
まあ少なくともハルヒがここにいなくてよかったかな。

「う、ひゃあっ!」

「どうした?」

「あ、あし、つかまれた」

「…………」

お化け屋敷の役者は女性にターゲットを絞れとでも言われているんだろうか。
今度こそ泣きそうになった名前の頭を撫でてやってから、俺はその場にしゃがみこむ。しゃがみこんだ隣には落ち武者の横たわる姿があったが気にしない。

「ほら」

「ひぇ」

「ひぇ、じゃない。ほら」

「ほら、って、いわれても」

ええい、察しろよ。背中を向けてるんだから明らかに負ぶされと言っているようなもんだろう。
名前はすんすんと鼻を鳴らせていたが、やがてゆっくりと俺の背中にしがみついてきた。

「これなら、足を掴まれることはないだろう」

……多分。

「うん。ありがとう、キョン」

「構わないさ」

立ち上がり、ゆっくり歩き始める。
それからは何回か俺の足首が掴まれたりしたが、あんまり驚かなかったし別にどうでもいいのだが。

「ひひゃっ!?」

……首を絞めるのだけは勘弁してくれよ、名前。



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あきゅろす。
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