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屋台のお兄さん


ここからそう離れていない屋台で飲み物は売られていた。
しかし、そこには誰もいない。店員ですら暇そうにジェットコースターを見上げている。

「あの、すいません」

ひとまずここに名前が来たかどうかを確認しておくべきだな、と考え、店員に話しかけた。

「あ、はい。何にいたしましょう」

「いえ、お尋ねしたいんですけど、ここに高校生くらいの女の子が来ませんでしたか?」

「え?」

ジュースのカップを準備しかけた中途半端な体勢でこちらを見た店員は、ゆっくりカップを下ろしてしばし口を閉じた。それから一分も経たないうちに、ぽんと手を叩いて笑顔を見せる。

「来ましたよ。オレンジジュースを買われて行きましたが」

「……そうですか。あの、それはいつごろのことですか?」

俺の問いかけに、店員は変な質問をするなあ、といった表情で俺を見て、やはりまたしばし口を閉じて考える。あんまり自信はないようで、吐かれた言葉は曖昧だった。

「五分……くらいかなあ。さっき、っていうほどじゃないんだけど……」

ぶつぶつと独り言を言っているようだ。
俺はそうですか、ありがとうございましたと呟いて屋台に背を向けようとする。店員が顔を上げ、楽しそうに首をかしげた。

「彼女?」

「え」

にこにこと笑っているその顔を見つつ、いやそもそも彼女だったら一緒に買いに来るだろ、とかここにきたのはいつごろのことですかなんて聞きはしないだろうよ、と考える。
しかし、まあつまりは、今の俺の妙な気分がいけなかったのか、ちょっといたずらしてみたいって気持ちになったというか、わかるだろ。しちゃいけませんって言われたことはしてしまう、そんな子供心のようなものだ。

「………そうです、俺の彼女です」

半ば早口でまくしたて、今度こそ背を向けた。
後ろで「デートかあ、いいなあ」なんて言ってた声は聞かないふりだ。



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あきゅろす。
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