みんなのお母さん
ハルヒはしばらく考えるそぶりを見せてから、朝比奈さんと有希を見た。
「みくるちゃんと有希は?メリーゴーラウンドでいい?」
「ふえっ、えっと、そ、それでいいですぅ」
「異論は無い」
長門はともかく、朝比奈さんは唯一名前が出してくれた助け舟に縋るしかないだろう。
ハルヒは二人の了承を得たと同時に水を得た魚の如く、力強く走り出していった。本当に鉄砲玉だな、あれは。
「名前ちゃん、メリーゴーラウンドってなんですかぁ?」
一人でハルヒが突っ走ってくれるおかげで、朝比奈さんは名前に質問をしていた。対し、名前は朗々と返答する。
「馬の形を模した機械に乗って、くるくる回るんだよ」
「お馬さん……、ですかあ……楽しそうです」
朝比奈さんは嬉しそうに頬を染め(なんて愛らしいんだ)、名前にお礼を言っていた。一方、長門は先走ったハルヒを追うわけでもなく、話に加わるわけでもなく、名前の隣を歩いている。
こうしてみると、なんつーか……、
「お母さんみたいですね」
「思考を読むな、古泉」
人が考えていたことを口にして見せた古泉は、それは失礼、と言いながら肩をすくめた。
目の前を歩く名前、名前の右隣にいる朝比奈さん、左隣にいる長門。うん、言葉にしづらいが、お母さんっぽい。メリーゴーランドという発想は子供っぽい気がするのだが。
「何してんのよ!さっさと来なさーい!時間は有限なんだからねーっ!!」
ハルヒがきゃんきゃんとわめている。
仕方が無いので歩調を速めた。前を行く名前が楽しそうに駆け足で進む。みくるちゃん、有希ちゃん、転ばないのよー、とか言い出しそうな感じだな。って何を考えてるんだ俺は。
「キョン、何頭振ってんの」
「なんでもない」
怪訝そうに名前が問いかけてきた。
お前がお母さんみたいな感じに見えたなんて言えるか。
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