最初に乗るものは
「着いたわっ!」
電車が止まると同時に目を覚ましたハルヒは、鉄砲玉のように電車を飛び出て行った。寝起きだというのに元気な奴だ。
まだ少し眠そうに目をこすっている朝比奈さんに、相変わらずの長門、笑顔の名前。古泉?いつもどおりのあのエセスマイルだ。
駅から徒歩で数分の場所にある遊園地は、駅からでも見えた。大きな観覧車が俺たちを見下ろしている。
「ほらみくるちゃん、あれが観覧車だよ」
朝比奈さんの横に並んだ名前が、ハルヒに聞こえない程度の声量で呟いた。
「ふえっ…、あ、あれ、動いてるんですか…?」
初めて火を見た原始人のような反応をしながら、朝比奈さんが何回も瞬きをする。新鮮な反応って見てて楽しいな。
「何してるの、行くわよ!」
先頭を突っ走っていたハルヒが戻ってきて、後ろでのたのたと歩いていた長門とよろめく朝比奈さんの腕を掴んで走り出す。名前は長門の横に並んだ。
「いやあ、青春ですねえ」
「親父かお前は」
しみじみと呟く古泉に吐き捨てて、心持ち歩調を速める。いったいハルヒのあの小さな体に、どれだけパワフルな力が眠っているというのか。誰でもいいから測ってくれないかな。無理か。
遊園地の入場口でハルヒがチケット五枚と金を出す。この遊園地はどうやらフリーパスだそうで、いちいち乗り物に乗るときに金を払う必要が無いところらしかった。
認印の入ったチケットの半券を返されて、ポケットに入れる。
「さっ、どれに乗る?まずはジェットコースター?バンジージャンプ?飛行塔?みくるちゃんはどれがいい?」
おい、どれも絶叫系じゃねえか。しかもなぜその選択を朝比奈さんに向ける。
案の定、これが絶叫系だともわかっていない(そもそもわかっていたら真っ先に拒否していただろう)様子で、「ふええ〜」と声を上げている。
「ハルヒ、まずはウォーミングアップってところにしようよ。メリーゴーラウンドとか」
すかさず名前のフォローが入った。
「メリーゴーラウンドおぉ?あんた、ほんとに子供っぽいわね」
「結構楽しいんだよ、あれ!それに今日は平日だし、親子連れがいないから、きっとメリーゴーラウンド空いてるよ」
「………………」
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