まさに睡眠不足
家に帰って、明日のことを簡潔にオフクロに話した。休むのはあまり喜んで頷いてはくれなかったが、部活動みたいなものだ、と(まああながち間違いでもあるまい)説明すると納得してくれたようだ。いや待ておかしいだろ。部活動で遊びに行くバカがどこにいる。
「まさか、デートじゃないでしょうね?」
「はあっ!?」
オフクロがからかうような顔で俺を見た。それから、後ろのほうで夕食の準備をしている名前に視線を送る。そんなわけがないと即座に否定したが、オフクロはニヤニヤ笑っていただけだ。
学校休んでデートなんて、夢のまた夢だろう。第一俺とあいつはそんな関係でもなんでもない。
「キョン、顔真っ赤だけど。…まさかほんとに風邪引いちゃった?」
「引くか、バカ!」
思わず声を荒げて部屋に逃げてしまった。
ガキか、俺は。
なんだかあっという間に時間が過ぎ、心の準備もろくにできていないまま翌朝、俺は目を覚ました。
とは言っても、そもそも眠りについたのが朝の四時ごろであり、正直なところあんまり眠れていない。遠足前に眠れなくなる子供がいるが、まさにそんな感じだ。はしゃぎすぎだろう俺。
念のため制服も持っていくべきかと考えたが、名前が持っていくつもりは無いということを言っていたので俺もやめる。私服に着替えて部屋を出た。
新鮮な気分だ。平日に、学校へ行く時間より少し遅い時間に起きて、私服で活動する。
「おはよー、キョン」
「ああ、おはよう」
洗面台に先にいた名前は顔に「しっかり眠れました」と書いてあるような爽やかな表情をしていた。それに比べ俺の、なんとも言えない顔。本当に風邪を引いたほうがいくらかまともだった気がする。
「まさか、眠れなかった?」
「そ…んなわけ、無いだろう」
「だよねー」
心臓が跳ね上がったがなんとか無難な返事をしておいて、顔を洗った。表情を読まれたのか、こいつがいやに鋭いだけか。
やっぱりキッチンに向かうとオフクロがニヤニヤ笑っていたが、今度ばっかりは相手にしない。相手にしないぞ。
「…キョン、また顔赤いよ」
…相手にしないんだってば。
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