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がんばる超能力者へ


道中、横に並んだ古泉くんに話しかけてみる。
レフ板を脇に抱えて、重さを感じさせない足取りで進む古泉くんは、視線を下ろして私を見てきた。

「あのさ、今から行くところ、古泉くんの家に近い池って言ってたじゃん。そこは、本当に古泉くんの家なの?」

珍しく一瞬表情が固まり、笑顔が空笑いになった様子。もちろん周りには人がいるので、声は抑えて話しかけた。聞いちゃいけない話題だっただろうかと、謝罪を口にするべくのどに力を入れた瞬間、古泉くんは困ったように笑う。

「…なぜ、そう思われたのでしょうか?」

疑問に疑問で返してきた。ということはやはり聞かれたくない話題だったか、と心の中で呟いて、視線を下げる。

「うーん。ハルヒのイメージどおりの家じゃないと駄目とか、機関に言われてるんじゃないのかなって……。それか、機関が用意してるとか…」

前を歩いていたキョンが振り返り、私と古泉くんを見て怪訝な表情を浮かべた。軽く手を振ってみると、あきれたような視線が返される。それからすぐに横の国木田くんや谷口くんと話を始めたので、まあいいかとまた古泉くんに視線を戻す。

「一応、方向としてはこちらで合っているんですけどね。そのとおりです。機関が用意した、対涼宮さん用の家があるんですよ」

「あ、やっぱり」

もっと突っ込んだ話も聞いてみようかと思ったけど、さすがにそこまで行くと不躾極まりないので黙っておくことにした。
本当はもっと聞きたかった。ご家族とはどうしているのか。もしかして、一人で暮らしているんだろうか。でも、そう考えないと不自然な気もして。
もしご家族と一緒に暮らしているとして、ご両親はどう考えているんだろう。古泉くんがしていることを、知っているのだろうか。彼は閉鎖空間という場所で神の人と書いてしんじんというものと戦っているのだと、世界のために戦っているのだと、知っているのだろうか。
知らなくても知っていても、悲しい。そんな子供に、何て声をかければいいんだろう。どう接すればいいんだろう。どう労わればいいのだろう。それすらもわからない、私には。

「………」

「…名前さん?」

古泉くんはそんな家庭事情を全く喋らないし、匂わすようなことも何もしないから、何も知らない私は何かを聞くしかないのだ。でも、聞けない。聞いちゃいけないような気がする。
何かしてないと落ち着かないので、古泉くんの顔をまじまじと見つめることにする。疲れが溜まっているのか、クマがあるように見えた。光の加減でそう見えただけかもしれない、けど、私にはどうしても古泉くんが疲れているようにしか見えなかったのだ。やっぱり神人退治で疲れが溜まっているのかなあ。それとも、ハルヒの前でいつもイエスマンを続けていることがストレスに?いや、ただ単に勉強して寝ていないだけかもしれないし。でもやっぱり、疲れた表情してるよなあ。がんばってるんだ、古泉くんは。



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