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なかよきことは


ハルヒが出て行ってからおよそ二十分。
悲しいかな、俺たちを集めたのはハルヒであり、そんなハルヒは司令塔というべきポジションにいるのだろう。司令塔のいない俺たちは何をして今を過ごせばいいのか解らず、その場にしゃがみこんでボーッとしたり飲み物を買って飲んだりで、まあ能天気にすごしていた。

「ていうかさ、すごく今更なんだけど」

国木田の声に思わず顔を上げる。少し離れた位置で、名前と国木田と谷口が顔を突き合わせて話をしていた。いったい何の話だと近づこうか考えたが、ここで話に割り込むのも不自然なので黙っておくことにする。

「苗字さんの服、これだったんだね。昨日見たときに、うちの制服じゃないなあって思ってさ」

「ああ…うん。前の学校の制服なんだよ」

昨日?昨日っていうと、何だ?もしや撮影中に名前が抜けたのは、国木田と会うためだったのか。それはいったいどういうことだ。場合によっちゃ国木田、お前を問い詰めるぞ。

「おい、お前ら昨日会ってたのかよ?」

俺の心を代弁するかのように谷口が声を上げた。まるで責めるような口調だが、俺はもっと言ってやれ、という気持ちでそれを見つめる。国木田が鼻で笑うような笑顔を浮かべたかと思うと、いとも簡単に頷いてみせた。
名前はきょろきょろと周りを見てから、誰もいないことを確認し(恐らくハルヒを探していたのだろう)、国木田と同じように頷く。

「バイト先の人が入院してたから、そのお見舞いに」

俺はそれを聞いて目を丸めた。
バイト先の人って…、あの熊みたいな人か。山田さんだったかな。山田か鈴木か佐藤か、とりあえずごくありふれた苗字だったはずだ。
そんなの、聞いてないぞ。って、まあ俺が聞かなければならない話題でもないのだが。それにしても、一言くらいは言ってもいいだろう。まさかあの時は、ハルヒがいたから言えなかったのか?でも後から言うくらい…、などと、口には出せないモヤモヤが胸の内を支配し始めたそのとき、谷口がまた口を開く。

「国木田が一緒っていうのはどういう理由だ?」

「簡単だよ。その入院してた人が僕の知り合いだったから」

うんうんと同調するように頷いた名前と国木田が顔を見合わせて、ねー、なんて声でもつきそうな勢いで一緒に首を傾ける。なんだあいつら仲いいな。
俺と同じ思いでも抱えたのか、谷口が置いていかれた子供のようにすねた表情を浮かべた。

「山田さんが入院ですか。僕たちも、お見舞いに行くべきでしょうかね」

「うお」

気づけば横から急に声を上げる古泉がいて、俺はびくりと肩を震わせた。



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