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あだ名の由来


「有希、黒蜜好きなの?」

今まで知らなかった事実だ。宇宙人が黒蜜を好きだったなんて。
しかし、有希はゆるゆると首を左右に振った後、「好奇心」と一言呟く。言葉を探しているような口調だったものだから、たぶん有希もどうして選んだのかわからないのだろう。
と思っていると、有希の手に握られた黒蜜飴の袋の隅っこに、宇宙人を模したキャラクターの商品を抽選でプレゼント、という案内書が書いてあるのを見つけた。

(…無意識で目が引かれたのかなあ?)

有希の手から袋を受け取り、袋を開ける。中から飴を2つ取り出して、2つとも有希の手にのせた。見上げてくる大きな瞳が、どうして2つも?と語っているような気がして、私は少しだけ笑う。

「食べるやつと持っておくやつね。今食べろって言ってるわけじゃないんだけど。有希が今は食べたくないなら2つとも持ってたらいいし…」

私の言葉に有希は数回瞬きをした。と思うと、おもむろに1つをポケットにしまいこんで、もう1つの飴を包み紙を剥がして口に運ぶ。
カラコロと小さな音が聞こえて、ああ食べてるんだなと今更考えてみた。

「……おいしい?」

私の問いかけに有希はこくんと首を縦に動かした。ならよかった、と微笑んで、私も口に運んでみる。しつこすぎない甘さが舌の上に広がった。
なんだかちょっと得した気持ちになりながら、飴の袋を持って来た鞄に入れる。

「名前ぷーっ!何してんのっ?」

「鶴屋さん。あ、鶴屋さんも食べる?黒蜜飴」

「いるいるっ!黒蜜大好きっさ!」

いつの間にやら隣にいた鶴屋さんが、私の持っていた鞄に視線を落として笑っていた。ちなみに名前ぷーというのは私のあだ名らしく、私が知らない間に決められていたらしい。
有希にあげた飴をやはり2つ鶴屋さんの掌に落とす。女子高生が黒蜜なんてね、渋いかもしれないけど。まあいいじゃないか黒糖とかじゃないんだし。

「んまいっ!名前ぷー、あんがとねっ!」

「いえいえ」

ぽんぽんと私の肩を叩く鶴屋さんを見ながら、そう言えば私このメンバーの中で一番年上なんだよなあ、と考えてみる。その事実に自分で考えて自分で凹んだ。



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あきゅろす。
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