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ザコキャラ一号二号


駅前にはSOS団員以外に新たに人間が三人ほどおり、そのうちの二人はハルヒ言うところのザコキャラなのだが、名を谷口と国木田と言った。俺にとっての友人はハルヒにとってのザコキャラ。しっかり覚えておこう。

「おいキョン、話が違うぞ」

そしてそのザコキャラ一号こと谷口は、俺に食ってかかった。顔は怒りに染まっており、今にも文字通り噛み付いてきそうだ。

「麗しの朝比奈さんはどこだ?あの方が出迎えてくれるって言うから来たんだぜ。いねえじゃねえか」

そう。実は谷口の言葉通り、今この場に朝比奈さんの姿は無かった。それというのも、一昨日と昨日のハルヒから受けた仕打ちによる心の傷で出て来れないからである。いや、俺の推測だが。
もしあれが俺だったら(なんてことはありえないが仮説として)、そもそも昨日の時点でブチ切れてカメラに蹴りでも入れているところだろう。穏便にことを運ぶ主義だが、自分に災厄ばかりが降りかかるのであれば我慢なんてできないさ。

「俺は目の保養に来たんだぞ。それがどうだ。今日はまだ涼宮の逆ギレした顔しか見てねえぞ。詐欺だ」

「谷口、苗字さんがいるじゃないか」

谷口の言葉には国木田が返した。谷口は数メートル先で長門と話をしている名前に視線を送って、ほにゃっと表情を緩める。お前、その顔気持ち悪いぞ。やめたほうがいい。
かと思えば急に真顔になって、だめだだめだ、と手を左右に振る。何がだめだというんだ。名前にケチでもつけようものなら俺が多少は反論するぞ。

「名前は心のオアシスで、朝比奈さんは目のオアシスなんだよ。両方そろわないと駄目なんだ」

うるせえな。なんだその両者合体で完全版みたいなのは。名前で足りないなら長門でも見ておけ。
と、俺がぶっきらぼうに返すと、今度は国木田が返答をする。

「それにしても長門さん、やけに似合ってるなあ」

ザコキャラ二号、国木田ののんびりとした声に、俺はどう返すべきか迷った。
ちなみになぜこの二人がここにいるのかというと。昨晩俺が風呂に入っている際にハルヒから電話が来たのだ。妹から受話器を受け取り、髪の毛を洗いながら聞いた言葉がこれである。

「谷口のアホと、もう一人……名前が思い出せないけど、あんたの友達よ。その二人を明日連れてきなさい。ザコキャラで使うから」

この言葉により俺は、明日などという眼前に迫った日に、果たしてあの二人が暇なものかと気鬱に思いながら電話をかけてみたのだが、端役二人はどこまで暇だったのやら、二つ返事で了承した。
この一件により、俺は最近の男子高校生はどんな休日を過ごしているのか考えを改めたわけなのだが、それはまあどうでもいい話だな。
さて、ハルヒは男二人では絵にならないと思ったのかどうかは定かではないが、もう一人エキストラを用意していた。今は長門の顔をお辞儀するように眺めたり、名前のブレザーをじろじろと見つめている彼女だ。



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