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ブレザーとカーディガン


SOS団部室(?)のドアをノックしたにも関わらず、返って来ると思っていた返事はいつになっても返ってこなかった。
念のためドアノブを握ってみたところ、カチリと軽い音をたててドアは開いた。「あれ…」ぎいい、とかすかな音を立てて、扉の隙間から見慣れた部屋が視界に入り込む。
けれどそこには誰もいない。ハルヒはおろか、キョンの姿もみくるちゃんの姿もどこにも無かった。

「…?」

ひとまず鞄を置き、いつもの席に座る。眠さが極限まで達していた。できることなら今すぐ机に突っ伏して眠ってしまいたいところだ。それが許されるならばどんなに楽か。

「もしかして、ビデオカメラとか…」

調達に行ってるんだろうか。
ならば、今日はもう部室に戻ってくることはないだろう。帰ろうかな。そう思って帰る準備をするべく立ち上がろうとするのだが、足に力が入らずその場に座り込む。

「だめだ、眠い」

1人呟いて、その場にばたんと顔を伏せた。眠たくて仕方が無い。ちょっとくらいだけなら寝ても許されるだろう。今寝たら1時間は起きれないような気もするけど。
まあどちらにせよ施錠に誰かが来るだろうから、そのときに起こしてもらおう。ものぐさの極地でごめん。
ふらふらと暗闇が訪れ、私の意識が夢へと向かう橋を渡りかけた頃、誰かがドアを開けるような音がして、それから話し声がして…、だめだ、もう覚えてない。それからしばらく、やたら背中があったかかった気がするけど、そこまで。



「…むあ?」

今度は誰かの慌しい足音。私は顔を上げた。
ついでに時計を見上げる。その瞬間目から目玉が飛び出るかと思った。――時刻、7時。おいおいおいこりゃどういうことだ。急いで立ち上がると、肩が急に寒くなって、バサッと大きな音がする。

「?」

急いで振り返り、足元を見下ろした。見慣れた北高のブレザーが落ちている。それから、気付けば足元にはもうひとつ、見慣れた北高のカーディガンが落ちていた。

「なんだこりゃ」

とりあえず拾い、埃を軽く払ってから両者を見比べてみた。明らかにサイズは違う。女物と男物…って、そりゃブレザーとカーディガンなら当たり前だよ。
自分の肩にあわせてみると、ブレザーはなかなか大きく、カーディガンはやや小さかった。キョンのじゃない。ハルヒとみくるちゃんのものでもない。ということは、残っているのは。

「古泉くんのと、有希の…?」

もしかして、部室に来たんだろうか。
なら起こしてくれたらよかったのに、という気持ちと、わざわざ背中と膝の上にかけてくれたんだ、という事実が胸をくすぐる。嬉しいような恥ずかしいような。寝顔見られちゃったよ、という恥ずかしさがだんだんせり上がって来る。
その瞬間、ガラリと大きな音と共にドアが開いた。珍しく息切れを繰り返す人物がそこに、肩を大きく上下させながら立っている。

「キョン……」



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あきゅろす。
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