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あくびが止まらない


「うへえ」

私はその場にバタリと倒れこんだ。
アンケート集計が、終わりそうで終わらない。人間なんてミスと切り離すことのできない個体なのだから、勿論間違いがあったりして(主に私)、また最初からやり直し、とか。
国木田くんも少し疲れがきているようで、時折あくびをかみ殺している。家でファイリングした資料を再び纏めなおしていたらしい。ご苦労様です。

「国木田くん、ちょっと休憩しよう。うん。とても眠たい」

「だね。でも苗字さん、寝ないでね」

「うう………」

正直、もう眠ってしまいそうです。
うつろうつろと目の前がゆれ、今にも夢の世界へ特急列車でレッツゴーしてしまいそうだ。
まだまだやることはいっぱい残っているわけで、まだ集計作業だって終わってないし、おまけという名目で始めた先生インタビューなんて岡部先生くらいしかできていない。色々やることはあるし宣伝ポスターも作成しなくちゃならないし生徒会に行って確認書類ももらわなくちゃいけない…て、死んでしまう。
おまけにハルヒたちの機嫌も損ねないようにできるだけSOS団に行かなければならないんだけど、それまで手が回らない。頭だけはフル回転なんだけど。ぐるぐるとめまいがしそうなくらい脳みそが頑張ってくれている。でもあまり意味は無い。
ぺちぺちと頬を叩かれた気がして、閉じていた瞼を押し上げた。ぼんやりと歪む視界に国木田くんの顔が映る。

「あ」

「やっぱりちょっと寝てた?」

「ごめん………」

時計に視線を向けると、さっきまで4時10分だと思っていたものが20分へと変貌している。うわあ。ちょっと休憩って言っても2〜3分で終わらせるつもりだったのに。国木田くん、10分も起こさないでいてくれたんだろうか。ごめんよ。
何故こんな、残業頼み込まれてコーヒー片手に家に帰るのも我慢して頑張っているサラリーマンみたいな境遇に置かれなければならないのか。答えはひとつ。クラスの誰一人として手伝ってくれないからだ。
いっそ異例だ。ここまで非協力的なクラスなんてほかには無いんじゃないのかと思うくらい。個々で用事があったり部活の出し物が忙しかったり、っていう理由はあるんだろうけど、推薦した以上手伝ってくれたっていいじゃないか。ちょっと不満が溜まったぞ。

「今日はこのくらいにしようか?苗字さん、このままだったら立ってでも寝ちゃいそうだよ。片付けなら僕がやっておくから、ね。キョンたちのところに……」

「行かない。私もてつだう」

口が回らなくなって発音が拙かったかもしれない。国木田くんは苦笑して、じゃあありがたく、と呟きながら片付けを始めた。あくびをかみ殺す。眠い。家ではちゃんと寝てるはずなのに。やっぱり精神的疲労が多いせいかな。それとも、休んでいる時間が足りないのか。

「苗字さん、あまり無茶をしないようにね。ただでさえ大変なんだからさ」

「えー……、何が?」

「涼宮さんのこととか、かな?まあ、僕もよくわかってないけど。どうにも、彼女が絡むと皆大変そうだな、って思えちゃってさ」

「はは」

苦笑しかできない。確かにハルヒの身の回りにいれば、いやでも大変という言葉を思い知ることができるだろう。
片づけをし終えて時計を見上げたら、5時5分前だった。今から行ってもいるだろうか。まあ、顔見せくらいはしておかなければだめだろう。



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