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キャスト決定


結局国木田の「びっくりした話」とやらを聞くことは出来ず、俺はそれを忘れず後日にでも聞こう、と思っていた矢先の出来事なのだが、簡潔に言おう。俺はハルヒの映画に少しだけ、本当に少しだけ期待してやってもいいかな、と思っていたのだ。――それを撤回したい。早急に。

・製作著作……SOS団

・総指揮/総監督/演出/脚本……涼宮ハルヒ

・主演女優……朝比奈みくる

・主演男優……古泉一樹

・助演女優……苗字名前

・脇役……長門有希

・助監督/撮影/編集/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用……キョン

かったるいという言葉が何よりもお似合いの授業が終わり、本来ならば快く過ごすはずの放課後。俺はノートの切れ端を見つめて今の気持ちをどうやったら的確に表せるのか必死に考えた。
とりあえず思うことは一つだ。

「俺は何役こなせばいいんだ?」

「そこに書いてある通りよ」

助監督撮影編集荷物運び小間使いパシリご用聞きその他雑用ね。今のを早口で誰か言い続けて見てくれ。そのうち嫌な気持ちになるだろうから。その気持ちがまさしく今の俺の気持ちだ。

「あんたは裏方スタッフ。キャストは見ての通り。ぴったりなキャスティングでしょ?」

「あたしが主演なんですかぁ?」

おまけに名前まで助演女優ときた。
ハルヒは五組の実行委員が決まった瞬間寝てでもいたのだろうか?いや、起きていたな。そしておもちゃが取られてつまらないような顔をしていると俺は表現さえしたさ。――それを、女優だ?どこかで後頭部でも打ち付けてきたか。

「あいつに助演は無理だろう」

「わかんないわよ。ものすごく化けるかもしれないわ。なんてったって演技指導はあたしがやるんだからね。そこらへんはバッチリよ」

いや、俺が言いたいのはそういうことではなく。
眩暈がしそうだ、と唐突に思った。長門と古泉だってこの場にいない、忙しい人間だというのに、どうしてそいつらが主演や脇役をやらねばならん。暇な俺は小間使いだというのに。いや、別に出演したいわけじゃないが。

「それにしても、有希も古泉くんも名前も不真面目ね」

まるで賞味期限の切れた卵を食べてしまったかのような顔でハルヒが呟く。

「こっち優先って言っておいたのに自分のクラスの都合で遅れるなんて、厳重注意が必要だわ」

どちらかと言えばクラスの出し物の手伝いにも行かずここにこうして集っている俺たち三人のほうがおかしいんだろうがな。




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あきゅろす。
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