推薦される理由なんて
「そういえば、名前さんも実行委員をされているようですね」
突然話を振られ、私はぱっと顔を上げた。オレンジ色を吸い込むような古泉くんの茶色い髪の毛にどうしても視線が行く。
「あ、うん。私の何が良かったのかねえ。推薦されちゃったよ」
それとも係を押し付けやすい顔でもしてたかな、と頬肉をぶにぶにと伸ばしていれば、古泉くんがふっと笑った。何故笑う?私の顔がそう語っていたのか、古泉くんは軽く握った手で自分の口元を隠しながら、すみません、と呟いた。
「いえ、あなたが…、名前さんが、そのようなことをおっしゃるものですから」
「そのようなこと?」
「ええと…。そうですね。簡潔に言ってしまえば、あなたには十分推薦されるべき理由がある、ということです」
きょとんと首を傾ける。生憎だけど、私にリーダーシップなんてあるはずも無く、平凡人間街道まっしぐらで、凡人検査というものを受けたらぶっちぎりで合格(?)なのではないかと思うほど普通で。
普通の人間が推薦されるものだろうか。それとも五組に普通以上の人間がいないだけなのか。どちらかはわからないけれど、私は古泉くんに詳しく話してくれるよう続きを促した。
「僕より、彼のほうがずっと的確に教えてくださるでしょうけど…」
「キョンが?」
私が推薦された理由を教えてくれるんだろうか。でもキョンに一応聞いてみたには聞いてみたけれど、「お前の成績がいいから」とか「面倒見がいいから?」とかやや疑問系で返されただけで大したことは言われていない。
「成績的なこと?」
「いえ、違います。あなたの人間性ですよ」
「………普通なのがいいの?」
だんだん会話が成立しなくなってきているような。
私は古泉くんの言わんとする言葉の意味を図りかね、お手上げのポーズをした。古泉くんがはっきり私に教えてくれることは無さそうだ。褒めてくれているんだろう、ということはなんとなくわかるんだけど。
「うーん、まあ、いいや。あ、そういえば古泉くん、頼みたいことがあったんだけど」
「はい、何でしょう?」
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