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オレンジ色の空


「…はれ?」

SOS団の部室(と言っていいものか)のドアノブを握ると、ガチッと引っかかった。
つまり、鍵が閉まった、ということだ。どうしよう、困ったな。キョンと入れ違いになってしまったようだ。途中トイレに寄ったからか。

「帰っちゃったかな……」

携帯を取り出し、メールの確認をする。キョンから連絡は入っていない。この時間帯ならみくるちゃんあたりが着替えでもしてそうなのに。中から物音はしないし、みくるちゃんがいる様子も無い。だとしたら皆帰った、と考えるのが当然だろう。
その場にずるずるとしゃがみこみ、ふう、と溜息をつく。指先がかすかに震えていた。プリントを数えたり細かい作業を繰り返していたからだろうか。指先でも筋肉痛とかあるかな。

「名前さん?」

ふと背後から声をかけられ、私は顔を上げた。だいぶ高い位置から古泉くんが私を見下ろしている。このまま立ち上がったら古泉くんの顎に私の頭頂部が衝突してしまう。

「どうしました?彼なら、あなたを迎えに行くと言って出て行かれましたが」

「あー、うん。入れ違いになっちゃったっぽい。古泉くんは?」

「僕は、忘れ物を取りに……」

鍵当番にでもなったのだろうか、ポケットから鍵を取り出した古泉くんが、私を見てにこりと笑う。ひとまず古泉くんの用事を済ませて、それから一緒に下駄箱まで降りよう。
部屋に入り、真っ先にホワイトボードへと視線を移す。やっぱり。みくるちゃんの丸っこい字で、「SOS団映画!」と書かれていた。簡潔すぎる。

「ああ、それですが。涼宮さんが提案されたのですよ。SOS団で映画を上映しようと。……っと、失礼。あなたは既に知っておられましたね」

苦笑を浮かべ無言を返した私に、古泉くんは頭を下げた。手に持っているのはプリントだ。

「何それ?」

「僕のクラスの出し物――の、企画書です。リーダーというわけではないのですが、役員に任命されてしまいまして」

「そっか…。古泉くん、しっかりしてそうだもんね」

ちょっと見せて、と言い、プリントを見る。企画案がずらりと並んでいた。とりあえず舞台劇には決まっているようだけど、それからが進んでいない。ありきたりな御伽噺のタイトルと、よくはわからないがオリジナルストーリーらしきタイトルが3つほど書かれていた。

「古泉くんが演じるところ、見てみたいな」

「僕は裏方の方がお似合いでしょう」

「そんなことないよ!」

それこそ古泉くんはそのイケメンを全面に押し出すべきだ。いや、何を考えてるんだ私ってば。
とりあえずさっさと部屋から出ようかと古泉くんに言い、部室に鍵をかけた。窓の外がオレンジ色に染まっている。唐突に、日が暮れるのは早いな、と思った。



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あきゅろす。
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