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悶々


いつにも増して傍若無人を発揮するハルヒは、以前に言ったことがあるわけでもないのに「ドジッ娘メイドは三回に一回お茶を持ってくるときひっくり返せ」と命令し、朝比奈さんを困惑させた。
長門は長門でいつもどおりだし、古泉も古泉で人畜無害そうなスマイルを浮かべる。だが、その表情がややきょとんとしたものに変わった。本当に一瞬だけ。

「僕が最後だと思っていたのですが…。名前さんはどうされたんですか?」

「あいつは文化祭の実行委員で来れない」

「あたしは来なさいって言ったのよ!あんな係、ちゃちゃっと終わらせて来れるでしょ!」

じゃあお前が手伝って来い、と言う前に古泉がハルヒを微笑で制す。
まあまあ涼宮さん、と珍しく言い聞かせるような言葉を発した古泉は、「僕が最後ということにしましょう。暫定ですが」と言い、笑顔を苦笑に変えた。

「僕が遅れたせいで会議が始まらなかったのだとしたら謝ります。それとも何か奢ったほうがいいですか?」

俺はそのとき、古泉に「じゃあ奢れ」と言うよりも引っかかる言葉を聞きつけ、いち早くハルヒに視線を向けた。会議?なんだそれは。俺は聞いてないぞ。

「言うの忘れてたわ。あんたと名前にはいつでも言えると思って」

昼のうちに俺と名前を除くSOS団員全員には知らせておいたらしい。会議ねえ。たいてい思いつきで行動するこいつのことだから、きっと内容も突飛的で碌な話ではないのだろう。

「と言うより、これから何をするのか考えないといけないのよ!」

まるでそれが己の義務だと言わんばかりに奮起するハルヒを見つめて、俺は文化祭への思いを馳せる。まだ中学生だった頃、高校生になったらきっとクラスの奴らがいやに盛り上がって、部活なんかではクラス以上に盛り上がって、楽しむものだと思っていた。現実と理想の差っていうのはすごいもんだな。かすりもしない。
文化祭に向けて目をキラキラと輝かせるハルヒに、俺は実行委員になればよかったんじゃないかと提案した。今からでも遅くない、名前、あるいは国木田。あいつらなら、お前がやりたいって言ったらさっさと代わってくれると思うぞ。

「それじゃ意味ないのよ。やっぱりあたしたちはSOS団らしい活動をしないとね。せっかくここまで育て上げた団なのよ!校内に知らない者はいないまでの超注目団体なのよ?解ってんの?」

SOS団らしい活動とはどういったものなのだろう。俺はこの半年間におこなった活動を思い出して軽く、いや、ものすごくブルーになった。思い出したい思い出があるかと言われれば笑顔でないと答えられるだろうさ。特にハルヒに関しては。

「期待に応えるくらいのことはしないといけないわね」

一体誰がSOS団に何を期待しているのかはわからないが、なにやら難しい顔をして考え始めたハルヒに俺が何を言ってももう無駄だ、ということは周知の事実で。
育て上げたというわりにはまだ同好会以下の存在から昇格していない分際である、ということを俺は言葉にするべきなのだろうか。



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あきゅろす。
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