国木田くんと2人で
アンケート集計は準備運動に過ぎず、本番はもっと面倒なものなのだ。
これを5倍近くおおきな紙に手書きで書き直し、わかりやすいよう色分けをし、できれば飾りつけもする。作業自体は簡単に見えるかもしれないけど、やり続けていると面倒だぞ。しかも文化祭まではそう時間は無いときた。
原作を見ていたから全て覚えているさ。映画を撮るんだ、SOS団は。しかも、クラスの出し物よりもそっちを優先と言っていたような記憶もある。今頃ハルヒは怒ってるかもしれない、と思いつつ小さく息を吐く。
国木田くんだけじゃ仕事は片付かないし、作業した後の後片付けだって押し付けるわけにはいかない。だったらやっぱり2人でやって、2人で終わらせたほうがすぐに終わるはず。
だからハルヒ、ごめんよ。
…でも、突然だけど。私は涼宮ハルヒシリーズで、この回が一番苦手だったりする。
苦手というよりは、嫌い、のほうが正しいかもしれない。小説を読んでいて、ハルヒの傍若無人っぷりにイライラした記憶すらある。
ハルヒはいい子で、かわいくて、なんだかんだで周りを見てる、まあとにかくいい子なんだけど、言葉が足りない。行動が足りない。何かが足りない。それが怒りを呼び寄せてしまうのだろう。
そんな自分の心の狭さに苛立ちすら覚えた。
「あと、これコピーして先生に配んなきゃいけないね」
「だね。ありがとう、国木田くん」
国木田くんはにこにこと微笑んで、「お礼を言わなきゃならないのは僕のほうだよ」と答えた。それはどういう意味なのか。
「結構こういう地味な作業好きなんだよ。こういう代表委員みたいなものにも興味があったし。だからやれてよかった、ありがとう、っていう意味でさっきの言葉を言ったわけだけど、不自然だったかな?」
「ううん、そんなことない………」
一瞬国木田くんがジェントルに見えた。いや、実際ジェントルなんだろうけど。ジェントルの意味くらいおわかりのはずだ。紳士的って言う意味ね。
「よしっ、じゃあ、今日はとりあえずここまでにしよう。ごめんね国木田くん、長々とつき合わせて…。片付けしておくから、帰っちゃっていいよ?」
「いや、僕も手伝うよ」
さすがジェントル。
私は嬉しくて少し目を細めた。ファイリングされたファイルを棚に戻しつつ、新たに出さなければいけない書類を取り出して目を通しておく。
そこまで時間はかからないと軽く見ていたせいか、思っていた以上に時間のかかる作業にこれからのことを重ねて考えてめまいがした。
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