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神様のお守り


そういえば今は文化祭シーズンだ。
夏が終わり、体育祭という行事が終わり、残すところは文化祭。体育祭は結果的にSOS団を知らしめるかっこうの見せ場となってしまったが、文化祭ではそこまで俺たちが目立つハメになることはないだろう。
一年五組はアンケート発表という、訊く者全てを「?」とさせる不思議なものに決まったのだが、俺としては全く構わないさ。することが無い分自由に過ごせるというわけだ。
朝倉涼子が転校(と言っていいのやら)をしてから、この一年五組を纏める人間など現れず、今こうしてグダグダなまま進級へと突っ走っている。

「ちょっとキョン、聞いてるの?」

と、俺の思考を中断させる存在が現れた。その名も涼宮ハルヒという。頼んでもないのに現れ、頼んでも無いのに喋り始める。さっきから文化祭が面白くないだのテンションを上げろだの、別にお前に言われても、としか思えない話題ばかり振られてくる。
お前が面白いと感じることは何なんだ、と問いかけてしまったのがダメだったのか、やたら長々しく語り始めたハルヒを見つめて俺はため息を吐いた。既に面倒だったので途中あたりから耳に入れるのをやめる。

「……まあ、いいわ。部室に着いてからじっくり話してあげるから」

話さんでいい。誰も望んでない。誰かが「話して!」と言えば話せばいいさ。言われなかったら黙ってろ。
俺の溜息を吹き飛ばすかのような強烈な溜息が返って来て、俺は顔を顰めた。

「あんた、もうちょっと名前を見習いなさいよ。あれくらい献身的に働きなさい」

「あれは係だからだろう」

――そうなのだ。
実は今回、名前はアンケート発表という謎な出し物(?)の実行委員に任命なんかされてしまっている。
原因は夏のテストなのだが、クラスの中で一番成績がよく、実はそれなりに面倒見が良い、という理由から推薦されてしまったのだ。
名前以外に推薦された人間はいない上に、立候補者もいなかったので、なし崩し的に決まってしまった。ハルヒだけは気に入ったおもちゃを取られたような、面白く無さそうな顔をしていたが。
ちなみに実行委員の片割れは国木田だったりする。こいつも成績がいいからとかそんな理由だ。あと名前の隣の席だから。滅茶苦茶な理由だとは思うが、断らなかった国木田も国木田なので、よしとしよう。
というわけで、名前は動かざる事山の如し、の五組の尻拭いのように実行委員として必死に働いている。アンケート用紙を配り、集計し、また新たに配り…違う組、教師組、身内などと多ジャンルに分けて集計をしているようだ。
役員になってから早3日目。岡部は決めるだけ決めて後は名前と国木田に押し付けたので、今こうして頑張っているのはあいつらだけだ。
頑張れとしか言いようがないさ。手伝え?…手伝ってやりたいのは山々だがな。俺には俺で、することがあるんだ。

「ほら、行くわよ!」

こいつのお守りだ。




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あきゅろす。
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