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世界の終わりを考える


とりあえずの消去法で選択した割に、古泉はいい話相手だった。
先述したとおり、聞き役が得意な俺と話のネタに尽きない古泉なら、沈黙が降りてすぐに会話が終わる、なんてことにもならないからだ。

『――それがですね、その星座になったいきさつなんです』

「はあ、そりゃなかなかシビアだな」

天体少年だったらしい古泉ならではの星の話を聞きながら、カーテンを開いて外を見る。無数に散らばる星と、一つだけポツンと浮かんでいる太陽。
今はあの月が名前に見える。近くに見えるのに、一向に届くことのない存在。俺を例えるなら、そのへんの星だ。無数にいて、ひとつくらい消えてしまってもわからないような。

『――さん?』

ふいに名前を呼ばれて、改めて電話の向こうの声に耳を澄ます。不思議そうに俺の名を呼んだところを見ると、どうやら無視してしまっていたようだ。

「悪い。なんだ?」

『いえ。返事がなかったので、そろそろ眠たくなってきたのではと思いまして』

「……どうだろうな」

眠たいかと聞かれれば、全く眠たくない。
だが、これ以上古泉に付き合せるのも酷だろうと思い、電話を切ることにした。――いや、正確には切ろうとした。そのつもりで電源ボタンに手を置いたというのに、口から出てきたのは挨拶ではなく疑問文だった。

「古泉、お前、世界が終わるってどんなもんだと思う?」

『はい?』

あまりにも唐突な質問だったからか、古泉の声がいささか頓狂だ。珍しいものを聞いた、と思いつつ、何も考えていない頭から適当に続ける。なんであんな言葉が出たのかと言う疑問もどこかへ飛んでいた。

「お前にとって、世界が終わるってどんな感じだ?」

夜空は無数に星が散らばる、どこまでも空は続いている。
世界の終わりとはこれが消えることなのだろうか、それとも月が一つ消えること?
実際にそんなことにはなりはしないのに、そんなことを考える。そして、俺であれば後者がそうなのだろう、とも。



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あきゅろす。
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