やってこない答え
『あなたよ。キョンくん』
俺。俺が動けば変わる。
『キョンくん以外の人では、絶対にできないの』
俺以外では、駄目。
家に帰って、寝転がったベッドの上で朝比奈さん(大)の言葉を思い出す。
考えれば考えるほど泥沼だった。俺にしかできないこと?いや、考えれば結構ある。ハルヒに怒ることができるのは俺だけだし、ツッコミに関してはそれなりにレベルが高い方だと思うし……いやそれは違うか。
だが、それと名前がどう関係してくるのかと言われると微妙だ。俺にしかできないこと――それが、名前を救い、この世界に呼び戻す鍵となる。
『キョンくんが、正しく動くことができれば』
正しく動くことができなければ、長門(大)とはもうこれから先会うことはない。しかし、そんな未来本当に存在するのだろうか。朝比奈さん(大)の知っている未来が、俺が正しく動くことのできた未来だとすれば、俺はこんなに悶々としていなくても結構あっさり答えに到達できるのではないのか、とか。
全部妄想だ、願望だ。考えなければ全てがおしゃかになってしまうのはちゃんとわかっている。
朝比奈さん(大)がどんな未来に基づいて行動しているのかはわからないが、それは俺が行動しない限り訪れない未来だ。のんびり待っていたところで未来が自分からやってくるわけではない。時間はどんどん過ぎて行くけれど。
「正しく……」
正しく。正しく?
答えが欲しい。でも、答えを求めていても答えは来てくれない。誰も教えてくれない。
自分で到達するしかない、それはもううんざりするほど解っている。解っていても、焦るのだ。俺にはできない。俺が答えに辿りつくことなんて、ハルヒが優しくなって「ご飯を奢ってあげる」というレベルにありえない。
『キョン』
それでも、もう一度あの笑顔に会うために、何かをしなければならないのだ。
「…………」
枕元の携帯に手を伸ばす。誰かと話をして、とにかく自分の凝り固まった思考をなんとかしたかった。
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