真偽の確認
「説明を」
短い言葉で朝比奈さん(大)にそう言った長門は、本当にいつも通りの表情だ。それでも俺の気のせいか、どこか厳しい印象を受ける。
「認証コード、k00290。緊急事態による狭防壁です」
「報告がない」
「時間がありませんでした。すみません」
何を話しているのかはわからないが、朝比奈さん(大)が責められているのか?
いつものごとくびくびくとした表情を見せているものの、朝比奈さん(大)の態度は毅然としている。
長門は少し考えるように黙りこみ、しばらくして俺へと視線を向けてきた。突然こちらを向かれたからか、俺の肩がびくりとはねる。
「…………」
長門はじっと俺を見た後、朝比奈さん(大)へと視線を戻した。一体何だったんだ。
「第三者は」
「いません。X-1198、Y-2175。X-4301、y-3809……私の把握しうる限り、この場にいたのは私と彼だけです」
再び長門が押し黙る。何かを考えているというよりは、何かをしようとしているようだった。だが、視線を下に向けてしばらくした後、まるで思い出したかのように顔を上げ、ゆっくり俺へと視線を移す。
「今の報告に、誤りは」
一瞬心臓がドキリとしたが、ここで無駄に動揺するわけにもいかない。なるべく平静を装って、長門を見返す。朝比奈さん(大)に確認を取りたかったところだが、こんなときに朝比奈さん(大)を見れば不自然極まりないからな。
「エックスがどうのこうのはよくわからんが……ここにいたのは俺と朝比奈さんだけだ。見えない誰かがいたんなら話は別だが」
俺の下手なんだが上手なんだかよくわからない言い訳を聞いて、長門はやはり何の感情も見受けられない無表情のまま俺を見つめた。そしてゆっくりゆっくり口を開いて、独り言とも思える声量で呟く。
「……そう」
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