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防護壁の中で


「現在、長門さんに力をお借りしてこの周辺に防護壁を張ってもらっています。わたしたちのやりとりは感知されていません」

「はあ……」

「さて。ここからが演技のお時間です」

演技?
ぽん、と小さな手のひらを軽く叩き合わせ、朝比奈さん(大)が微笑んだ。長門(大)はその場にたたずみ、朝比奈さん(大)の言葉を待っているようだ。

「この防護壁、長門さんに無理を言って作っていただいたナノマシンなんですが、動作時間は約三十分――もう少しで壊れます。外ではこの時代の長門さんが、プログラムの破壊に尽力しているはずですから、防護壁が壊れると同時にこちらの長門さんには不感知座標に転移してもらいます」

いいですか?とばかりに見つめられて、こくんと浅くうなずく。
満足そうにほほ笑んだ朝比奈さん(大)が、合わせていた手を少し離して口を開いた。

「防護壁の中に存在したのは、私とキョンくんだけ。……この意味、わかりますか?」

再び浅くうなずいた。未来の長門がいたという痕跡を残さないためだろう。恐らく、こんな能力を持っていない朝比奈さん(大)が俺と二人きりでいたことに長門は深く疑問を抱くはずだ。きっと何をしていたのかということも聞いてくるだろう。どんな言い訳をすればいいのだろう、と朝比奈さん(大)を見上げながら思う。

「キョンくんは、私たち以外の存在がいたか、という問いかけをされた場合否定をしてください。後は私がどうにかします」

俺が嘘をついたところで、心拍数をゆうに感知してしまう長門には無意味だと思うんですが。

「この防護壁の中、長門さんたちのような存在の能力をぼんやりぼかす効果が入っています。判断機能を鈍らせるプログラムも組まれているから、察知はされないはずよ」

なんだかいろいろと便利で、いちいち長門(大)に座標軸の移動なんてせずにこの防護壁の中にいたらいいではないかと思わないでもないが、できない理由があるんだろう。そう言えば朝比奈さん(大)はもう元の時代に戻ると仰っていたしな。

「残り三分」

長門(大)が呟く。少しばかり緊張した面持ちでこちらを見た朝比奈さん(大)は、俺を安心させるようにやわらかく笑った。



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あきゅろす。
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