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平凡なヒーロー


「は……」

地球を救うことのできるヒーローは君だ、とでも言われたような、現実味のない感覚だった。喉の奥からかすれたような、奇妙な声が漏れる。
いや、実際そうだった。俺にとって名前を間接的にでも救うということができるのは、ヒーローにでもなれるような気持ちだったからだ。今までは存在すら無意味とばかりに無力だった。長門に頼りきりで、近くで頑張れ頑張れとエールを送る程度のことしかできなかったのに。

「俺……、ですか?」

「そう。キョンくんしかいません。キョンくん以外の人では、絶対にできないの」

いよいよ実感がわかなくなった。俺にしかできないって、どういうことだ?とにかく平凡な奴でしかできないこととかか?想像がつかない。
しかも答えは教えられないときた。最近の若い奴はよく答えを知りたがる、と誰かが言ったが当然だ。答えを知りたい。別にテストの結果とかそういったことはどうでもいい。今は、答え通りに動かなければ名前を救うことができないのだ。
……いや、待てよ。そもそもそれは、名前がこちらの世界に戻ってくることが前提だ。朝比奈さん(大)もそれを前提として話をしている。ということはつまり、

「名前は……、この世界に、戻ってくるんですか」

「…………」

朝比奈さん(小)であれば、何か動揺するなり目が泳ぐなり、言葉がおかしくなるなり何かしらの変化が見られただろうが、朝比奈さん(大)は揺るがなかった。何のヒントも含まない笑みを浮かべ、俺を静かに見返す。

「――それも、あなた次第です。キョンくん」

「俺…………」

いきなり鋼の盾と鋼の剣を渡されてこれで世界を救いなさい、と言われたような気分だ。やり方は知らない。この先どうすればいいのかも教えてもらえない。全てを手さぐりで進めなければならない。
幸い期間は設けられていないようだが、俺の心情的になるべく早く終わらせたい。なるべく早くことを済ませて、名前にもう一度会いたい。

「朝比奈さんが、今後俺に関わることは……」

「援助という意味でなら、今後一切ありません。私から解答は出せませんし、これはキョンくんが答えを見つけなければ意味のないことですから」

「……わかり、ました」



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あきゅろす。
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