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未来人のお願い


着替えるから部屋を出て行きなさい、と言われ、俺は古泉とともにとりあえず部屋を出た。
女子は全員ハルヒの部屋で着替えるそうだ。まあなんとも、華々しい図じゃないか。

「あの、キョンくん」

「朝比奈さん…。どうしたんですか?」

部屋から一人出てきた朝比奈さんが俺を呼び止めた。
古泉も立ち止まり、俺と朝比奈さんを交互に見る。言外に「退散しましょうか?」と瞳が語っていたが、朝比奈さんは気にしていないようだった。古泉と俺の中間あたりを見て、俺を見る。

「えっと……、うまくいえないんですけど、名前ちゃんのこと、気にしていてください」

「そりゃどういう意味ですか?」

「うん、その、えっと……、あたしの気のせいかもしれないんですけど。なんだか名前ちゃん、海が苦手なのかもしれなくて」

「…それは、初耳ですね」

古泉の発言に朝比奈さんも頷く。
俺だって初耳さ。だって、前夜もフェリーでもあんなに嬉しそうにしてたじゃないか。…いや、本当にそうか?あいつが楽しみにしていたのはあくまで皆との合宿で、本当は海が嫌いなんじゃないだろうか?
あいつがフェリーの上で一瞬見せたあの表情。もしかすると、…もしかするのかもしれない。

「わかりました。任せてください、一応見ておきますから。…でも、どうしてです?あいつがいやだって言ってたんですか?」

ううん、と朝比奈さんは首を横に振り、僅かに俯く。

「違うの。あたしの杞憂かもしれない…けど、フェリーの上で海を見つめてる名前ちゃんが、なんだか、すごく悲しそうに見えて。嫌な思い出でもあるのかなって」

デジャヴだな。
俺はそうですか、と返し、お礼を言って古泉と部屋に戻った。男子連中は一緒に着替えるなんて薄ら寒いことはしないさ。個人主義だ。
着替えつつ、脱いだシャツを畳んで俺は息を吐いた。名前の過去。思い出。
不謹慎だが興味があるからな。



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