とにかく怪しい
「怪しくないのが逆に怪しいわ」
「じゃあ見るからに怪しかったらどうなんだよ?」
「見たままよ。怪しいに決まっているじゃないの」
そうだな、「理不尽」とか「無茶」の代名詞になれるな、涼宮ハルヒは。
つまりどちらに転んでも怪しいというハルヒの言葉に、朝比奈さんはきょとんと首を傾げていたし、古泉は苦笑気味だった。名前にいたっては動物園のパンダを見るかのようなきらきらした瞳で俺たちを見ているしで、なんなんだもう。
ハルヒは勿論部屋割りでもその唯我独尊っぷりを発揮し、ツインを独占した。お前一人のためにツインの部屋が使われることが可哀想でならん。
ベッドに腰掛ける女性陣三人組と、化粧台に座る俺、古泉は泰然と腕を組み壁にもたれて立っており、名前はベッドに背中を預けるように――ようは床に座っていた。
「解ったわ!」
「何がだ」
「犯人」
ああ…、俺は突っ込むべきなんだろうか。
意味がわからんと吐き捨ててしまえば楽だろうに、ハルヒのおもちゃを見つけた子供のような瞳がそれを許さない。とにかく意見をするのは俺だけのようだし、仕方ない、言おう。
「何の犯人だ。まだ何も始まってなどいないぞ。到着したばかりだろうが」
「あたしの勘ではここの主人なのだわ。たぶん、一番最初に狙われるのはみくるちゃんね」
「ひいっ」
わけのわからんことを一通り言い終えたようなので突っ込もうと思えば、まだ続きがあるとでも言うように人差し指を立て、今度は名前に向ける。
「そして次に狙われるのは名前だわ!どこかに連れ去られて、あたしたちが推理して助けるのよ」
俺は、ハルヒに「何の漫画を読みすぎたんだ」と言うべきなのだろうか。
しばらく考え、面倒になったのでやめた。
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