[携帯モード] [URL送信]
問題の原因


リビングに下りると、既にテーブルに朝ごはんが用意されていた。
妹はもう食べたのだろう、その証拠に妹用の小さなお椀をおふくろが洗っている。早く食べなさい、と言われて椅子に腰を下ろし、そこで気付いた。

「……名前は?」

テーブルの上に置かれているのは俺の朝食だけ。
名前のものはない。本来ならこの時間帯にはもう下りて、ちょうど朝食を食べているくらいなのだが。
ぽつりとつぶやいた俺の言葉に、おふくろが反応する。

「誰のことを言ってるの?いいから、さっさと食べなさい。遅刻するわよ」

「……は?」

思わず聞き返そうかと思った。口から飛び出そうになった言葉を急いで飲み込む。このパターンは想定していなかったが、似たような経験は一度だけある。落ちつけ、と自分に言い聞かせて、なんでもないと呟いた。
シャミセンがいない。名前もいない。でも、ハルヒはいる。長門もいる。最悪の状況は避けられそうだ。
咽せながら朝食をかき込み、急いで学校に向かう。途中長門に連絡をし、部室で待っているように頼んだ。電話をしたそのとき、電話向こうの長門の様子はいつも通りだったので、人格や記憶全てがいじられているという可能性はなさそうだ。

「長門!」

部室の扉をあけると、長門はいた。
いつもならば窓際で本を読んでいる長門だが、今日は静かに窓際に立っている。物憂げに外の様子を見ていたようだが、表情はいたっていつも通りの無表情だ。

「長門……」

「…………」

始業式が始まるまであと二十分。それまでに教室へ戻る必要がある。ということは、正味十五分程度で話を聞かなければならないということだ。いやいっそ、遅刻してしまってもいい。
が、長門は急いているように俺に言った。

「今回のことは涼宮ハルヒ、情報統合思念体、及びわたしの力によるものではない」

それは、天蓋領域とかいう奴らの仕業ということか?

「その可能性も非常に低い。わたしの感知し得る範囲で、彼らが苗字名前・あなたの猫に直接的な干渉をしたというデータはない」

じゃあ、誰がこんなことをしたっていうんだ。また新たな勢力が出てきたということか?ややこしい、いっそはっきり言ってくれ。

「…………」

長門が一瞬黙り込む。こんなふうに長門が言い渋り、遠まわしな話をするのも珍しい。長門にもわからない相手なのか?
しかし、長門から言われた言葉はまたしても、予想もしないことだった。

「彼女自身によるもの」



前*次#

12/100ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!