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猫の消失


眠っている間、夢を見た。
いつも夢を見たらその内容をぼんやり覚えている俺だが、今回はほとんど内容を覚えていない。なんとなく、悲しく切ない夢だったという記憶はあるのだが。
途中、シャミセンが鳴いた気がする。寝ぼけていたから夢の中のことかもしれないし、実際に鳴いたのかもしれないが、実際に確認はしていないからわからない。

朝起きたら、シャミセンがいなかった。
寝ている間に俺の部屋から出ていることはよくあるが、今日はきっちり扉を閉めていたので出られるはずがない。いつの間に出たんだ?俺が寝ている間に妹がシャミセンを連れて行ったのか?

「キョンくん、おはよー!朝だよぉ〜」

タイミングをはかったのかというところで妹が入ってきた。表情が明るいので、シャミセンに何かあったということはなさそうだ。

「なあ、シャミセンは今下か?」

一度妹が下へ連れて行って、餌でも食べさせてやったのだろう。そう思って問いかけたのだが、妹の反応は俺の予想を大きく超えたものだった。

「キョンくん、何言ってるのー?」

「え?」

「シャミセンなら、もう帰っちゃったじゃない」

「…………え?」

何を言ってるんだ、とは俺が妹に言ってやりたい。何を言ってるんだお前は。
中途半端に起き上がったままの体勢で止まっていると、妹は少しだけ寂しそうに笑ってこう言った。

「もともと、うちの猫じゃなかったし、仕方ないよねって。キョンくんがそう言ったんだよ?」

――どういうことだ。
話の展開についていかない。いつだ?
頭の中にクリスマス前の悪夢がよみがえる。俺が寝ている間に、一夜にして変わってしまった世界。また同じことが起きるとは思えないが、とりあえず確認はとらなければならない。携帯を取り出し、な行を探した。長門有希。ある。大丈夫だ。涼宮ハルヒもいる。

「……悪い、寝ぼけてたみたいだ。もう下りるから」

「変なキョンくん〜」

これ以上妹に不審がられても困る。適当に話を終えて妹を部屋から出させると、とりあえず着替えた。名前に話を、聞かなければ。



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あきゅろす。
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