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SOS団臨時カメラマン


夢の中でやたらファンタジーな出来事に遭遇していた。
フリフリヒラヒラドレスを身にまとったマイエンジェル朝比奈さんが、魔法のステッキをふるってどこからともなく名前を出現させる。
出現した名前は、召使い長門とともに悪魔王ハルヒのもとへと行くのだが、途中ハルヒの使い魔である古泉とうっかり恋に落ちるというハチャメチャなラブストーリーだ。
それでまた急な展開なんだが俺と名前は許婚とやらで、俺はそんな二人のラブロマンスを快く認められるはずがない。「ふざけるなチクショー!」の一言でも放ってやろうか、そう思って口を開きかけたその瞬間、目も開いた。

「あ?」

起きた瞬間にさっきまでくすぶっていたはずの夢の名残が消えていく。

「何寝てんのよバカ。さっさと起きなさいよ。あんたは真面目に合宿するつもりあんの?行きの船の中でそんなことじゃこれからどうするつもり?」

たたき起こされたのだろう、僅かに肌の表皮が痛い。恐らく叩いた張本人であるハルヒは、けろりとした表情に少し怒りを混ぜたものを俺に向けている。そんなの言われてもな、眠いもんは眠い。

「もう着いたのか」

寝ぼけ眼で現段階での反省点を考えていると、ふいにフラッシュが俺を襲う。眩しいなんて思う暇もなく、目に入ってきた情報を理解するのに一生懸命だった俺の細胞は歓喜した。

「ふふー。寝起きの顔撮っちゃいました」

無邪気とはあなたのためにあるのだと小一時間説き伏せたい、そんな朝比奈さんがカメラ片手に俺を見ている。なんだこのサービスタイムは。誰が用意してくれたんだ、今なら古泉にだって拍手を送るぞ。

「寝顔も撮っておきました。よく寝てましたよ?」

寝ぼけていた上に沈みかけていた俺の意識が急上昇する。朝比奈さんパワーとでも名付けようか。いや、もっとネーミングセンスの良い奴に頼む必要があるな。
俺がどれだけニヤついていたのかは知らないが、ハルヒに「やめたほうがいい」とケチをつけられ、長門には今まで以上に無表情を極めた無表情を向けられた。あと名前は無反応。ある意味これが一番傷付くかもな。
俺は鞄を引き寄せた。フェリーが目的地到着とともに、動きを激しくしている。微妙に揺れる船内で、これから起きる出来事に向かって精神鍛錬でもせねばな、と思った。



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